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「暮らし方上手」コラムの記事一覧

部屋の汚れにも愛しさが

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5年前、長女がウサギを飼いたいと言い出し、専門店でピーターラビットのモデルになった種類で、標準より大きめに生まれた「麦」と出会いました。元気に跳ね回り、愛らしくケージから鼻を突きだし、一目で気に入りました。犬や猫だとふれあいすぎて、いつかはくる別れの時の辛さを考え、ケージ内で飼うウサギに決めたのですが、結局ケージの外にサークルで仕切って走らせ、ふれあいながらのお世話に。

 

平均寿命が6~8年とわかっていたので、そろそろ覚悟も必要かと思っていた矢先の10月、前の日まで元気だった「麦」との突然のあっけない別れ。悲しみの深さは言うまでもありません。

 

20年前に新築設計を担当したお住いでは、ご入居後間もなく子犬2匹を家族の一員として室内に迎えられました。普通は床板の傷を考えますが、そのお住いは杉板です。

 

10年経った時にお伺いすると、愛犬たちは若い頃とても元気だったようで、毎日走った痕とわかるぐらいに杉板の柔らかい部分(春目・早材)が凹み、堅い部分(秋目・晩材)の木目が浮き立っていました。愛犬が作った「浮づくり」です。

 

そして数年後2匹共に看取られ落ち着いた頃に、普段の足触りは気にならないけど、床掃除に膝をつくのが痛くて良い方法がないのかとのご相談がありました。無垢材の良いところで、薄く削れば凸凹も少なくなります。

 

LDK全体を電動サンダーで削り、自然ワックスを塗れば膝をついても大丈夫になりました。きれいになった床を見ると、愛犬が背中をこすりつけてたクロス壁の角の汚れが気になりますが、汚れも愛しい思い出です。今は、保護猫を引き受けられて、愛猫との暮らしを楽しまれています。

 

我が家では、掃除をしたものの、麦のケージを未だ片づけることができません。時が経つことでしか癒せない事を実感している今日この頃です。

 

(「木族」2020年12月号より)

素材は実物で選びたい

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4年前に長男が水筒に麦茶でなく水を入れて持って行きたいと言い始めてから、2ℓのペットボトルの水を箱買いするようになりました。普段でもお茶ではなく常温の水を飲むことが多くなり、月に6箱以上と増えてきて、切らさないように気を付けています。空きペットボトルも嵩高く、なにかと負担になってきたので、もっと簡単に美味しい水を手にできないか検討しているところです。

 

置く場所の都合もあり、水道水を浄水か整水するのが我が家に合っているので、インターネットで調べていくと数種類の機材が候補に残りました。

 

ところが、特に味に敏感な長男の為に試飲して決めたいものの、案外ほとんどのメーカーがそんなサービスを行っていないので正直困っています。納得してから購入したいのですが…。

 

 

そんな折、ご予算の都合で床の杉板張りを断念し、壁クロスの張り替えのみの工事を検討されている方から、左官壁「微風(そよかぜ)」が実際に塗られたところを見たいとご相談がありました。私の自宅近くの方だったので、4年前の改装時に塗った我が家の微風を見に来て頂きました。

 

微風のいいところ、気を付けないといけないところもご説明すると同時に、我が家の杉板(床)が経年変化で色が落ち着いてきている様子も見て頂きました。新しい時と違い、傷もついていますし、大半がワックスも掛け直していない、生活感がある状態です。きれいな写真や小さなサンプルと違い、足触りで杉板の柔らかさを感じ、実際の生活の中の杉板を見て、断念していた杉板を張りたくなったご様子で、

「家族と再度相談します」

と言って帰られました。

 

まだ結果はお聞きしていませんが、選ぶ時は写真でもデータでもなく、実物に触れて感じて決めるのが一番納得できます。

 

私も「水は試飲できない」なんて諦めずに探したいと思います!

 

(「木族」2020年10月号より)

 

 

シンプルな動線が大事

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戸建ての建替えやリフォーム、リノベーションのご依頼でご自宅にお伺いして、暮らしにくい間取りだなぁと感じることがよくあります。住まわれている方はそれに合わせているので、ほとんど気付かれていません。そして、なんだかモノが片付かない、収納が少ない、家事で疲れる、ただ生活しにくい…と言われます。

 

新築時の暮らしを考えていないプランが原因の時は、同じ設計者として責任の重さを感じます。一から建て替えをする時や思い切ってリノベーションができればすっきりと解決しますが、予算に合わせての小規模のリフォームの時はもどかしい限りです。動線を考えて家具を移動し、適材適所に収納を設えることが関の山で、この間取りじゃなかったらなぁ…と溜息がでます。

 

新築の年代によっては、暮らし方の変化で間取りが合わなくなっている場合もあります。古民家によくある田の字型の和室では、建具を使って柔軟に小さくも大きくも使えますが、個人の部屋としては落ち着かないですし、収納も少なく、コンセントの位置にも困ります。続き間の和室が一番日当たりのよい場所にあっても、滅多に使わない客間や仏間になり、普段の生活の場は日当たりが悪いところになります。これらの場合は住まわれている方も知るところで、大規模なリノベーションになり、ご予算とのにらめっこ。

 

一昔前の住まいは廊下と個室で細かく区切られて、プライバシーは守られていても風通しや採光が悪く、思い切ったリノベーションでないと解決できないことばかりです。

 

生活動線がシンプルで、風の流れや太陽の動きも見据えた間取りが一番だと痛感しているこのごろです。

 

(「木族」2020年8月号より)

親は見守る覚悟が必要

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夏至(6/21)も近づき、日暮れが遅くなってきました。洗濯物の取り込みや夕食の段取りもつい遅くなってしまいます。

 

長い外出自粛期間、どのように過ごされましたでしょうか?私はもともと在宅で仕事をしているのでその点は大きく変わらなかったのですが、時間に余裕ができたので、今まで後回しにしていた仕事や家事をしたり、色々なことを見直すことができました。

 

2月号で書きました我が家の納戸(和室6帖)を長男(16歳)の部屋へ、3月末に模様替えをしました。長男と2人で家具を動かしたり、納戸に溜めていた普段使わないモノの整理をして、なんとか2日間で形になりました。この後、学校への登校もほぼ無くなり動画配信の授業を受けたり、家で過ごす時間が長くなったので、良いタイミングだったと思います。

 

長男は、初めて自分の部屋を考え、自分の基地をつくるような感覚なんでしょうか、モノひとつの配置を決めるのも楽しそうで、今でも過ごしてみて、より快適になるよう微調整をしています。それに自分の部屋を持って余程嬉しかったのか、最近では早く一人暮らししたいとも言い始めました。母としては巣立ちの時期が早まったようで少し寂しい気持ちですが、ぐっとこらえて長男の成長を温かく見守りたいですし、それまでの時間を大切に過ごしたいです。子供が自分の部屋を持つことの意味を教えてくれたようです。

 

私の仕事面では、個人のホームページ「住楽」をやっと立ち上げ、未だ現在進行形ですが、今まで携わった住まいの写真を整理して一軒ずつ実例のページを足しています。

 

お施主様ご家族のお顔を初めてお会いした時から思い出し、忘れかけてたエピソードも懐かしく思い返しています。あらためて、どの住まいにもひとつひとつ物語があると実感しています。

 

もしよろしければ、ご訪問下さい。

 

(「木族」2020年6月号より)

充実した空間で五感と時間を大切に

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「小さくても豊かに暮らす」

とても曖昧で主観的な言葉ですが、先月開催したセミナーの題目です。

 

住まいづくりでは、ご予算の都合で施工をする面積が限られることが珍しくなく、「小さく」という言葉には、せっかくの夢がしぼんでしまうような良くない印象がついてきます。

 

しかし私が思う「小さく」とは、面積の大小ではなく、大切にしたいことを軸にして、ギュッと詰まった、充実した空間にすることで、ぴったりと身の丈に合った着やすい服を作るようなイメージがあります。ぴったりと合わすためには設計としても知恵を絞りますが、お施主様がご自身で管理できるモノの量を知ることや、価値観に沿ってのモノの整理は必然となります。

 

「豊かさ」は四季や嵐、陽ざし、安全安心、人との繋がりなどを感じられる時間を過ごす、五感と時間を大切にすることではないでしょうか。

 

国産材の杉(無垢材)の床板は柔らかい素材なので傷がつきやすいですが、足触りが冬は温かく、梅雨と夏はさらりと心地がよく、香りは部屋の空気を一変します。年月を経ると段々と味のある飴色に変わる様子も目を楽しませてくれ、私は豊かさを感じます。

 

自分は何を大切にして暮らしていきたいかを明確にすることで「小さくて豊かに暮らす」ことができると思います。「小さくしか」できないと肩を落とさず、諦めないで欲しいです。

 

(「木族」2020年4月号より)

 

 

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