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残そう伝統技術「長ほぞ込み栓」

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巨大地震が危惧される中「私の家は大丈夫でしょうか?耐震等級3以上あるのでしょうか?」と大阪府で5年前に新築したお施主様からお問合せがありました。

 

日進月歩の建築業界、建築時期により性能に対する考え方も変わっています。今の民家の新築では許容応力度計算した耐震等級3(建築基準法の1.5倍の強さ・最高位)は標準仕様となりましたが、ちょうど5年前は構造計算ソフト採用の過渡期で、その方の家は手計算の構造計算で、確認をすると耐震等級2(建築基準法の1.25倍の強さ)ぐらいでした。テレビなどで耐震等級3以上ないと大きな被害を受けると煽られているようですが、民家の住まいづくりでは、耐震等級3でないからといって不安になることはありません。

 

民家(国産材住宅推進協会)の住まいづくりの特徴でもある、全ての柱頭柱脚に古くから日本建築に使われた伝統工法=横架材(梁や土台)に細い穴を開けて、長ほぞという突起がある柱の先をそこにはめて硬木(樫や栗の木)の栓を横架材の横から差し込み、横架材と柱を繋ぐ「長ほぞ込み栓」=を開設当初から採用しています。

 

現に、阪神淡路の震災の時は耐震等級1(建築基準法レベル・最低位)ぐらいの時代でも被害はなく、地震がひどかった東灘区の家も漆喰塗りの壁にヘアクラックが1本入っただけで、棟上げ直後の家を計測すればほとんど狂いがなかったと聞いています。

 

もちろん「長ほぞ込み栓」が全てではありません。ただ、現在「長ほぞ込み栓」を採用している工務店さんは希少ではありますが、少なくとも構造に有効に働いていることは間違いなさそう。伝統技術の一つとして継承していきたいものです。

 

(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)

~2024年木族10月号より~

冷房が苦手でも命のためには…

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年々暑さが増しています。毎年勧めていたのですが、とうとう夫も通勤時に日傘デビューをしました。日傘男子も最近よく見かけるようになりましたね。

 

「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」とする日本の古い民家は窓も多く風通しがよく、藁葺(わらぶき)等の断熱性能の高い屋根材で、天井裏も広く取られ、軒も深くして夏を木陰のように過ごせるように造られていました。

 

しかしそのような民家でも、今の夏は外気温が高く、風を通しても特に日中は熱風で涼しくは暮らせなくなっています。

築49年の木造2階建ての我が家は、断熱材が入っていません(改装の時1階の一部に入れました)。日中に冷房をかけている1階から階段を上がると頭から全身へ暑さが広がり、外気温度より高い2階は地獄です。2階の寝室は就寝時間より早めに冷房を入れて冷やさないと寝ることができません。夏場は屋根の断熱材が大切だと実感しています。

 

数年前に友人から聞いた話では、マンション一人暮らしの40代女性が冷房の冷たい風を嫌い、ベランダの窓を開けて扇風機で暑さを凌いでいたようです。しかし、その結果、熱中症で亡くなられたようです。水分補給の不足が原因かもしれませんが、その話を聞いてから躊躇なく室温が上がれば冷房を使用しています。私も冷房の冷たい風は好きではないので、嫌う方のお気持ちはよくわかりますが、今の暑さでは、上手に冷房を使うことが最善かと思います。

 

直接冷たい風が当たらないように、冷房の温度を調整し、足元を冷やさないようにと工夫しながらこの夏を凌いでいただきたいものです。

 

最近の気密性や断熱性が高い家でさえ、一度暑さが室内に入ると保温してしまうので、上手に冷房を使うことが前提になります。昨年、冷房が苦手で、Tシャツ等を軽く水で濡らし、気化熱(水が蒸発する時に熱を奪ってくれる)を利用して涼しく過ごされている方からもお話を伺いました。ご参考にして下さい。

 

(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)

~2024年木族8月号より~

住み継がれる住まいの改装、全力で

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母が他界して7年経ち、実家の管理を私がし始めて約10ケ月。エレベーター無しの実家のある公団マンション(3階)へ移り住むのは難しく、賃貸にするにも改装費が嵩みそうで、姉とも話し合い、心苦しいのですが手放すことにしました。未だ買い手はついていませんが、遺品整理の段取り中です。

 

以前に衣服や整理できるモノは処分しているので、大きな家具や電化製品、布団等がメインです。姉から「不要なモノだけど思い出のあるモノばかりだから業者選びは慎重にしてね」と言葉が添えられました。

 

幼い頃に引っ越してきてから50年は経ちます。私の家族の思い出が詰まっている家なので、決心したものの心が揺れます。

 

ポストの確認と、風を通しに帰る時は、母の抜け殻のような実家は寂しいので、一人で帰ることができず、近所にあるお墓参りも兼ねて、いつも夫と長女について来てもらいます。売れてしまうと、帰る家もなくなり年1~2回のお墓参りだけになるのも寂しいです。

 

6月と8月に見学会をさせていただく中古住宅の改装は、空き家になっていたご実家の改装工事です。着工前にご両親の遺品整理をされているお施主様の姿を見て、思い出のモノと向き合う辛い作業かと見受けましたが、ご実家を活かし住み継ぐことがご両親への供養にも感じ、とても羨ましくなりました。

 

ご両親と過ごした空間をリニューアルして、秋に生まれるお孫さんを迎えられます。家族が集い、過ごしやすい住まいになるよう精一杯務めさせていただきます。お施主様のご厚意で開かせていただく見学会です。改装のご検討をされている方は参考にしてください。

 

(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)

~2024年木族6月号より~

中古鉄骨戸建て 改装しました

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私は24年前に築25年の木造の中古戸建住宅を購入しました。中古戸建も1軒として同じ条件や状態ではなく、その点、色々見るのは楽しい反面、選定することと、購入してから分かった状態に悩み疲れたのを思い出します。

 

「購入する前の土地と中古住宅セミナー」を受講された方から、見て欲しい物件がありますと、点検のご依頼がありました。築34年の屋上付きの鉄骨3階建ての戸建て住宅です。

 

鉄骨造の良いところは、構造計算されているので構造がしっかりしているところです。逆に問題点は、断熱が施されていない事が多く、冬は寒く、特に最上階は天井からの輻射熱で夏が暑いところです。断熱改修するのも難しいカ所ですが、今回は売り手様から、南に広く面しているので、冬よく陽が入って暖かいとお聞きし、少し安堵しました。

 

内覧すると、1カ所雨漏りがあった跡、屋上の防水もメンテナンスが必要な状態、壁天井はクロス貼り替えが必要、外壁タイルにヒビ有り、在来工法のタイル貼りの浴室はとても寒そう等でした。点検できる範囲での現状をお伝えしました。

 

ご縁があり購入され、内覧時には荷物などで見えなかった収納部分2カ所、他1カ所にも雨漏り跡が見つかりました。工事着工日はちょうど雨で、壁仕上げ材を解体して触ったところ、しっとり濡れていました。外壁に足場を立て総点検したところで、外壁面の傷みもみつかりました。すべて補修をした上で塗装をします。雨漏りの難しさは、最善の補修をしても、最初からやり替えない限り、100%止まる保証ができないところです。

 

そんな中、お施主様自身でおしゃれな壁クロスや襖紙を選ばれ、住まいづくりを楽しんでおられるようで嬉しくなりました。4月28日にお施主様のご厚意にて見学会を開催致します。ぜひとも住まいづくりの参考にしていただきたいと思います。

 

(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)

~2024年木族4月号より~

 

大きな地震が来る前に

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大阪でもゆっくり大きく揺れた元旦。日を追うごとに震災の爪痕の大きさを知り、誰もが被災地に祈りを捧げ、明日は我が身かもと不安になられたと思います。

 

地震予知は難しく、日本ではいつどこにいても地震へのリスクは高く、関西も概ね100~150年周期で起こる南海トラフ地震(昭和東南海地震<1944年>及び昭和南海地震<1946年>)から80年近く過ぎているので、切迫性が高まっています。推定被害は最大震度7、津波10メートルだそうです。私の家は地震でも大丈夫かな?と思われた方も多かったことでしょう。

 

新築の時なら、その時に決められた耐震性能を確保することができますが、戸建て中古住宅となると築年数や家の状態によって補修方法等も変わります。

 

建築基準法(1950年)ができる前に建てられた古民家の場合は、揺れて地震の力を逃がす伝統工法の構造が多く、安易に現行法=揺らさず固める方法=を採用すると全体のバランスが崩れることもあり、構造補強は慎重に検討しないといけません。

 

新耐震基準(1981年)以前の中古住宅は基礎の鉄筋が入っていない場合が多く、基礎まで補強をする場合は工事範囲も広くなり、費用負担も大きく、どこまで補強するか悩ましいところです。

 

無計画な増改築を繰り返している中古住宅では、複雑な構造になっていて、良い状態でない場合が多いです。築年数には関係なく、蟻害や雨漏りに気づかずメンテナンスを怠って家を傷めている場合も、構造的に弱くなっているので注意していただきたいです。

 

予想される大きな地震が来る前に、家の状態点検や耐震の診断判定等で我が家が安全なのか、どれくらいの補強が必要か調べて対策するのに遅くないと思います。備えあれば憂いなしです。戸建ての中古住宅ご購入の際も、当然チェックが必要でしょう。

 

(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)

~2024年木族2月号より~

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