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「その日ぐらし」コラムの記事一覧

端材でバット…心は折れない

その日ぐらし

地元の方々に使っていただくために協会の事務所1階に設置した端材コーナーは、多くの方に利用されており、昨年からは大人の方には地域の保育園に木材をお送りするための募金をお願いしています。そんな折、コーナーの前で悩んでいる少年が。

 

彼はこちらに気づくと。被っていたキャップを取り深々と頭を下げ、「僕は野球部所属の中学2年なんですが、有料でしょうか、無料でしょうか」と。中学生という微妙な年齢で、募金がいるのか悩んでいた模様。そもそも強制でもないのに、なんて真面目な少年だろうと思いつつ「無料ですよ」とお答えすると、安心した様子で材料選びが始まりました。

 

聞けば世界に一本だけのオリジナルバットを作りたいのだとか。握り加減や完成イメージを確認しつつ角材1本を選定。「どうやって作るの?」と聞くと「紙やすりで」「そっか、出来上がったら見せてね」「はい、必ず」

 

今ごろは角が少し丸くなった工程でしょうか。グリップ部分に差し掛かる頃には心が折れそうになるかも知れません。ただ、地道な作業が実を結び、ついに出来上がったバットが初打ちでぽっきり折れようとも、彼の心は折れなかった証となることでしょう。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2024年木族4月号より~

フリールームの奥深さ知る

その日ぐらし

先日ネットで「無駄な間取りに憧れてフリールームを作って後悔した」という記事を読みました。家を建てる際、妻が読書をするというのでフリールームを作ったが、結局妻は使わず、ネット記事の筆者である夫がハンモックやサンドバックを吊るしたものの、やがて使わなくなり、ドラムセットを置いたがそれも飽きて、今は物置と化しているとのこと。

 

フリールームとはその名の通り用途を決めない部屋。この筆者はフリールームで様々な趣味にトライし、やがて収納場所とし、むしろ有効活用しているようにも思えます。また筆者が無駄を感じているなら念願通りの「無駄な間取りの家」になったとも。

 

とは言えこの家の設計士はどう提案するべきだったのでしょうか、無駄を希望する施主に無駄があるのは無駄だと止めるべきだったのでしょうか。

 

ちなみに我が家にもフリールームがあります。メゾネットマンションの1階にあり、駐車場にしています。なぜか同じ間取りの隣の家は当初から室名が駐車場となっていたため共用部分扱いになり、毎月駐車料金がかかっています。

 

じゃあうちは得だったのかと言うと専有面積が増える分、管理費が高くなり結局のところプラマイゼロです。将来共用部の大規模修繕工事から外れるとなるとむしろ損です。

 

フリールームの自由度に囚われる先のネット記事の筆者と、フリールームの規約に囚われる私。フリールームの奥深さを感じています。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2024年木族2月号より~

 

 

お土産なんかいらないよ~

その日ぐらし

ペットが2匹いる我が家は、旅の行き先はペットと周れるかが要(かなめ)になります。最近はペットと泊まれるホテルも増えてきて、ドッグランやドッグプール、朝夕の食事もペット用が用意されています。

 

先日静岡旅行に行った際もそんなホテルに泊まらせてもらい、彼らが堪能したワンちゃんメニューは、野菜と鶏だしのスープ、ヤギミルクのリゾット、ジビエの野菜添え、豆腐ハンバーグ、ヨーグルト、かぼちゃプディングなどなど・・・。

 

スタッフさんからおやつはもらえるし、可愛い可愛いと嘘でも言ってもらえるし、そんな旅行がよほど気に入ったのか、スーツケースを手に取ると、2匹でじゃれ合い小躍りするように喜び合います。

 

しかし残念、今回は協会の梼原ツアー。君たちは主人もろとも留守番なのです。勝手に期待したくせに家を出る時玄関ドアが閉まるまで、2匹の視線が刺さります。

 

梼原のマルシェで彼らのお土産に干芋でも買ってあげようかと思いつつ忘れてそのまま帰宅。1日ぶりの再会はどんな反応をするかと思いきや、喜びを全面にしつこいくらい出迎えてくれました。干芋買ってあげればよかったです。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2023年木族12月号より~

まだ慣れない現場の尺貫法

その日ぐらし

建築現場ではさまざまな単位が使われ、熟練の大工さんは「尺貫法」を用います。

 

1尺は30.3センチ、約して30センチで換算しても「何尺何寸何分」なんて急に言われると何ミリなのかが追い付かず、「何ミリや!」と秒速でミリ換算する大工さんは、さながらバイリンガルのようです。

 

現場でよく使われる「すんさん」と呼ばれる角材は、1寸3分のことで39ミリ(挽き歩で減るので実寸は33ミリ)。「さんごかく」と呼ばれる柱材は3寸5分角で、10.5センチ角。ちなみに国産材住宅推進協会では、柱は「4寸」=12センチ角を標準としています。

 

面積の平米(㎡)を坪換算するときは「3.3124」で割り、何度も使うので頭にこびりついています。

 

図面を書くときはミリ単位を使うため、普段使わないセンチを使おうとして「柱材は120センチを使っています」と、ド派手に言い間違えたりします。部屋の広さは「帖」、間口は「間」、土地の広さは「坪」、あんまり広いと「東京ドーム何個分」。

 

メートル法で統一される日はいつか来るのでしょうか。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2023年木族8月号より~

「増え続け」て心配

その日ぐらし

築20年経った長崎の実家はそろそろ外壁が補修の時期を迎えていました。しかし父は昭和の頑固親父で「そんなのまだ必要ない」の一点張りで母を困らせていました。

 

そんなある日、飛込みで外壁リフォームの営業マンがやってきて、これも何かの縁と父はあっさり契約。こちらでは考えられない程の安い施工費が余計に怪しく、この時話を聞いていたら絶対反対したと思います。

 

しかし、その業者は毎日写真と共に工事の進捗状況を報告し、とても仕事が丁寧だったとか。足場を立てるために外した父の自作の葡萄棚の屋根まで、わざわざ大工さんが立派に直してくれて、父もえらい喜んだそうです。工事の様子を見ていたご近所さんから新たな仕事をもらえたと、最後は菓子折りまで頂いたそう。

 

固定概念を持ってはいけないと感じたものの、太陽光温水器とか、ミシンとか、帰省する度何かが増えており、飛込み営業マンの話で契約しがちな両親に心配が尽きません・・・。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2023年木族6月号より~

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