「暮らし方上手」コラムの記事一覧
設計の仕事を始めた時に、OMソーラーの産みの親である建築家・奥村昭雄さんの「見えないものを設計する」という言葉に心を打たれました。それ以来30年近くなりますが、時代の移り変わりで住宅に求められる性能も様変わりしています。最近は国も断熱性能を世界レベルに近づけるように推奨しています。
私の断熱に対する考えはその土地の気候に合った方法で、冬の暖房と夏の冷房のエネルギー負担を少なくして快適に過ごせるくらいが良いと思っています。高気密と聞けば息苦しいイメージを持たれる方も多いかと思います。どんなに断熱性能を高めても、気密性(空気がもれない)がないと効果は出ないのは事実です。
しかし、生活していれば空気は汚れていきますし、湿度調整も必要です。湿度調整は、杉板無垢材等の湿気を吸放出してくれる素材を使う事が大切です。
外気温が気持ちの良い春や秋、夏の夜は窓を開けて換気したいところですが、最近は花粉や外気の汚れで窓を開けられない場合もあります。計画的な機械換気も大切で、できるだけ自然に近くと思っていても歯がゆいところです。
もうひとつ、とても大切な要素が、太陽の陽射しの設計です。高断熱の住宅へ、夏場の陽射しが入ってしまうと、室温が上がってしまい、熱気がなかなか抜けません。かといって、冬場の陽射しはたっぷりと入ってほしいです。陽射しの調整を上手にしないと高断熱も仇になります。
このような要素全てを兼ね備えた住宅をパッシブハウスと呼びます。今では計算しながら計画出来るソフトが出ていて、遅ればせながら、その導入の検討をしています。勘でしていたことと計算を合わせると、よりよい「見えないものも設計する」住宅になります。
7月か8月にパッシブハウスのセミナーの開催を目指しています。「木族」の次号でご案内出来るように頑張ります!
(2023年木族4月号より)
七草粥が過ぎた頃、夕食後に重い腰を上げて食器洗いに取り掛かりました。お湯を流し始めると、排水が流れなくなり溜まり始め・・・嫌な予感。
改装して2年目に同じ事があり、その時の原因は排水口のゴミ取りカゴの目が粗すぎて、排水トラップ(匂いや虫が上がらないように水が溜まるところ)に細かなゴミが流れていたためで、夫が文句を言いながらも排水トラップにある点検口からゴミを掻き出してくれて解決。ゴミ取りカゴの目を細かなものに変えて約5年、排水には気を付けていたのに、また詰まってしまいました。
もう夜9時。外の排水口が詰まっていないか確認すると問題無し。食洗機を使っても大丈夫。となるとまた同じ部分の詰まりのようです。
点検口2つを使って有り合わせの細いブラシで掃除しても届く範囲は問題がなさそうなので、多めの過炭酸ナトリウムとお湯を流すと面白い位ブクブクと泡立ち、これは効きそう!と思いきや、何度やっても一向に排水は通りません。真夜中、気力も尽きて、水を溜めたまま就寝しました。
朝すぐにホームセンターでカップと排水管を掃除する長いブラシ、そしてパイプクリーナーを購入。まずはラバーカップを使いましたが、効果無し。長いブラシも肝心なところには入らず断念。残るはパイプクリーナー。ボトル裏の成分表では何だか環境に良くない成分だが、そんな事は言ってられない。ボトル半分を注ぎ、30分放置して水を流したら、なんと滞りなく流れる!これまでの苦労はなんだったのか・・・。
改装前13年間使用した古いキッチンの排水口は、細長い深いカゴの下にお椀型のトラップがあり、日々の掃除はしにくいですが、排水が詰まることは無かった。最近のシステムキッチンで使われる排水口は掃除がしやすくても、排水トラップ部分は詰まりやすい構造に思えます。是非とも改良してほしいものです。
(2023年木族2月号より)
5月の退院後、私のホームページのお問い合わせに嬉しいメールが。「家の一部のリフォームで、片付けについてのアドバイスも含めて相談したい。」とのこと。伺うと、とてもすっきりと暮らされていて片付け上手な方。利き脳診断でも、きっちりしないと気がおさまらないタイプ、でもどうしても解決できない部分のご相談でした。
収納でとても大切になるのが、置くモノと奥行きとの関係です。最近ベッドを使う方も多く、冬の掛布団が仕舞える奥行きの深い押入は家の中で1ヵ所あれば間に合います。ご主人のお部屋の収納部分の奥行きをお洋服が入る寸法に減らしてお部屋を広げ、床は杉フローリングを増し貼りし、収納部分の壁・天井も杉材に。
玄関、LDK は最初の改装時に屋根形状に沿った高い天井で仕上げられ、とても解放的なのですが、照明器具が天井埋め込みで電球を替えるのに一苦労。クロス張替え工事前に照明器具を壁付けに配線変更し、メンテナンスをしやすくしました。
和室の戸襖も、「細江さんのブログにあった、あの襖みたいなのにしたいです!」と5年前の改装例の話になり、しっかりとブログを見て頂いていることに驚きましたが、その例に負けず劣らずとても素敵な戸襖になりました(私のブログに今回の改装の写真を載せます)。
前回は(株)建築士事務所民家での施工。「スタッフ、業者さんのお人柄もよく、連携もとても良くて。今回もお願いします」とリクエスト頂きました。食にこだわる時に、生産者さんの顔や人となりを知ることが安心に繋がるのと同じように、住まいづくりでもどんな人が携わっているかを知っているだけで、設計の私も同じく安心してお願いできます。
住みながらの二期に分けた工事も終わったあと「施工の方々にも良くして頂き、プランニングでの女子トークもたくさんの気付きがあって、とても楽しく百点満点でした!」と嬉しいお言葉を頂きました。
(2022年木族12月号より)
この夏、夫の故郷佐賀県で義母の初盆の法要がありました。その時に参加した甥っ子から「この図面を見てくれる?」と3枚のA3の図面を渡されました。
1歳の娘がいる30歳前半の甥っ子家族は、独身時代から義母が長男の家に移り住み空き家になった夫の実家(築50年位)に住んでいます。初盆以降に建て替えをするため最近仮住まいに移ったところで、夫の実家は解体するとのこと。その新築の図面でした。
正直なところ、この段階でのアドバイスは「もう決まっている図面に茶々を入れる親戚の建築士」でしかなく、夫からも「大きな変更を言ったら迷惑になるから気を付けてよ」と助言も入り、困ってしまいました。
渡された図面を見てみると、最近当たり前になってきた高断熱高気密なのは良いのですが、室内は調湿性の無い素材、軒の出や窓の位置と大きさは、陽射しを考慮していない計画で「いいプランやん!」とも言えず、今更プラン変更はできないので、ん~と言葉を選んでいて私が黙ると、甥っ子も不安がり、とても嫌な時間でした。
まずここ(業者)を選んだ理由を聞くと、高校の同級生が中堅の地元ハウスメーカーの営業マンで、彼を信用してお願いしたとのこと。設計者とも夢いっぱいに話し合っている様子を聞くと、住まいづくりを楽しんでいるようで良かったと安堵もするが、何でこうしたの?と甥っ子に一つ一つ質問していくと、
「え~っと、何でやろう?確認してみるわ。知らんことばっかりやわ。勉強不足です!」
とうなだれた。
水を差す気はなく、もっと早い段階で相談してくれればと思いつつ、プランを変えず対処する方法の選択肢を伝えるアドバイスに。
一番驚いたのは、リビング横の畳コーナーに仏壇を置く場所を作っていること。
「新築完成したら、最初にお仏壇をうちに移動して僕がみるね」と、若いのに生前過ごした場所がいいだろうと配慮してくれた甥っ子の気持ちに感動。よい孫に実家を継いでもらって幸せですねとお仏壇に手を合わせました。
(2022年木族10月号より)
最近は調べごとがあると、手軽にスマホやパソコンでネット検索できるのでとても便利ですが、情報がたくさんありすぎて選択することが難しいなぁと感じたことがありました。
新築の完成見学会に、マンションリフォームを1年前に他社でされた人が参加されました。そのリフォームの際、床に無垢板材を使いたかったけれど断念し、表面だけ本物を貼った合板の床板材を採用したとのこと。一通り見学された後に、大きなため息と共に「やっぱり、無垢板にしたら良かった…。」と肩を落とされました。
詳しくお話を聞くと、リフォームの参考にインターネットにあげられている動画を見られて無垢板を断念したそうです。その動画では、無垢板を使うと、こんなに板と板の間が空いて、小さなゴミが挟まり毎日爪楊枝でかき出しながら掃除しないといけなくて、とても大変なので辞めたほうがいいですよ。と今後無垢板を使おうとする人への忠告として発信されている内容だったそうです。体験者からの発信はとても真に迫る生の声で参考になりますが、これまで床に無垢板材を採用して頂いたお施主様や私の自宅では、動画のような事が起きていないので、その声を選ばれたことがとても残念でなりません。
そもそも、何でそんなに板と板の間が空いてしまったのでしょうか?考えられる原因が3つあります。
第一に、乾燥がしっかりされていない無垢板材を使ったのかも。木の乾燥が充分でなかったら伸縮も大きくなり、板の間が空いてしまいます。
2つ目は、無垢板材に慣れた大工が施工したかです。慣れた大工は、一年を通してどれぐらい木が伸縮するかわかっているので、季節に合わせて貼り方を変えて加減してくれます。
3つ目は、無垢材に適していない使い方をした。例えば高温の床暖房を使われたとかです。
もし、これらのことを知っていたら、動画の方にも無垢材の良さをもっと感じてもらえて違う内容の動画になったことでしょう。
国産無垢材について、もっと良いところや気を付けないといけないところを発信して、求めている人に真っ直ぐ届けて選びとってもらえるようにしたいです。
(2022年木族8月号より)