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国産材コラム

助け合って生き残る

朴訥の論

様々な林業家から木にまつわる不思議な話を聞いたことがあった。

 

伐採される木は今から伐採されることを知っているという。また一本の木が害虫に蝕まれると隣接する林から一斉に虫が嫌う物質を放出し身を守るなど、俄かには信じられず半信半疑で聞いていた。

 

先日、それを裏付ける番組がNHKで「超進化論」と題し、実験映像を放映していた。一見静かに佇んでいるだけと思われた植物にこんなコミュニケーション能力が備わっていたとは・・・。

 

葉が青虫に食われるとグルタミン酸が発生、化学変化を起こし葉で毒物を生成する。虫の種類や大きさによって毒の量を調整するというから驚きだ。また、森林の80%は木と木を繋ぐ菌糸のネットワークを地下に構成しているという。

 

 

土を入れたボックスの中央に松を植え、その左右に樫を植え、両方の樫にそれぞれ光が入らないように袋を被せる。一方の樫は完全に土中を仕切り、片一方は僅かに空気が通るメッシュで仕切り6カ月間様子を見たところ、仕切られた樫は枯れ、片方の樫は松が光合成でつくった養分を菌糸が樫に与え続け立派に生き残っていた。

 

樹種が違ってもその行為は変わらず、助け合うというから見事だ。

 

映像の終わりに、ダーウィンの進化論は生物は競い合って生き残ることを説いたが、超進化論は助け合って生き残ると締めくくられていた。

 

生態系に絶大な恩恵をもたらしてくれる森林だが、人類が引き起こす環境汚染は植物の地下のコミュニケーションを破壊し、毎週9万ヘクタールの森林が消滅しているという。争いの多い人間に植物の声なき声が届く日は来るだろうか。

 

近年、建築中の現場にも孤立感が生み出す自己保身なのか、自分の事しか考えられず許容力に欠ける人が増えているかに思える。新築に伴い水道業者が前の居住者が流していた側溝に雨水を流す工事をしていたところ、隣人からストップがかかった。大雨が降ると側溝が溢れるため雨水を流すなと言う。迂回経路に流すにも溝を詰まらせないという念書の提出を求められた。

 

都市部では開発に下水道の整備が追い付かず、大雨の度に道路が河川と化す光景をよく目にする。それであれば、地域ぐるみでコミュニケーション力を発揮し、広い視野に立った解決策を検討するべきではないだろうか。

 

樹木の様に相手を思いやる心は、助け合いの精神を育み、街並みに活力と潤いを与えてくれるだろう。

 

(2022年木族12月号より)

 

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