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国産材コラム

住宅に100%はなし

朴訥の論

子どもの頃、年の瀬の気ぜわしい光景が好きだった。師走に入ればどの家庭も慌ただしく大掃除を始め、障子、襖の張り替えや畳の表替えにいそしみ、年末には地方から来る賃つき屋に餅つきを依頼し、鏡餅や小餅を皆で丸めたものだ。市場には人が溢れ返り魚や精肉屋の威勢のいい掛け声が響き亘る。隙間風が好き勝手に通る市営住宅ではあったが、門口には松飾が下がり、新年を迎える期待と心構えが感じられた。冬は寒いと観念していたのか一台の炬燵で寒さを吹き飛ばすほどの活力にあふれていた。

 

 

師走を目前にし、9月並みの気温が続けば、手が悴(かじか)むほどの冬に郷愁さえ覚える。

 

阪神淡路大震災から25年、耐震、耐熱は比較にならないほどの進化を遂げてきた。なお国の指針で高気密高断熱化は加速しとどまるところを知らない。ところがここにきてコロナウイルス流行の3波が懸念され、室内換気に目が向けられている。

 

シックハウス防止の観点から1時間に居室の半分の換気を求められ24時間機械換気が義務付けられている。しかし換気口や給気口が100%機能しているかどうかは分からない。埃やカビで目詰まりはしていないだろうか、また機能していたとしてもスイッチをonにしない限り何の用もなさない。

 

そのことも懸念してかコロナに精通する専門家達は窓を開放しての換気を盛んに促す。気密性を上げれば上げるほど換気が重要になることを覚えておきたい。

 

最近は簡単に得られることもあって、新しい情報を追い求め、情報過多に陥りやすい。どれだけの費用をかけてどれほどの設備を駆使したとしても、100%と言える完璧性は存在しない。良薬であっても何らかの副作用がありリスクを伴うのと似ている。

 

住宅の性能を上げれば上げるほど、気候はそれに抗うように地震、熱気温、台風、豪雨、竜巻など今まで経験したことのない激しさで試練を叩きつける。

 

住宅はどこまでの対応を迫られるのだろうか。その付けは費用負担増に繋がり、結局は施主さんが受けることになる。少し冷静になって考えてみよう。

 

まず機械に頼る前に、智慧を駆使して出来ることはないだろうか。当たり前のことであって当たり前でない、立地に即応した日射や通風をどう生かし切れるかであろう。もちろん北海道と沖縄では必要とすることも違う筈、我が家は何を望み、どこまでを必要とするのか。情報に煽られることなく冷静な判断を願ってやまない。

 

(「木族」2020年12月号より)

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