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国産材コラム

一味違う達成感

朴訥の論

 「ビルダーと国産材で建てることを約束し、プラン中ですが、希望する在来工法でなく、金物を多用する工法であることが分かり、解約したい」という相談があった。
 そのビルダーさんは元来ツーバイフォーを得意とし、国産材でという要望を受け、金物による工法を提案したようだ。困ったことにプラン決定もしていない段階で、前金として380万円のお金を支払っている。
 解約となれば今までプラン打ち合わせに要した費用を差し引きし、返金してもらうことになるが、お施主さんの設計の価値判断と、ビルダーの作業価格が一致することは少ない。大抵はお施主さんが不満を訴える。人が動けば費用が掛かると分かっていても、形にならなかったことにお金は出したくない。
 
 長い間、住宅建築に関わっていくうちに、住いに対する考え方も徐々に変化していることに気づかされる。

 近年、いい家という活字をよく目にするが、住まいづくりで一番大切なことは、立派な住宅設備を駆使することでも国産材を使えば良いということでもない。
人は様々であり、何を重視するかで、それぞれにとってのいい家も又、変化する。その人が何を求めて、どんな暮らしをしたいかをどこまで引き出し、それをどう反映し創りあげていくかが一番問われるところだ。
 

 設計者との打ち合わせに出来るだけ同行するように努めている。プロの当たり前とお施主さんの当たり前は違う、その為、思い違いやカン違いは起こりやすい。お施主さんの立場で考え、設計者の意図を噛み砕き伝えることや、ほんとうにそれでよいかをお施主さんに再確認し、考える機会を与えることを狙いとしている。建築はやってからでは遅い、変更すれば費用が嵩む。

 
 あるお施主さんから「いつもこんなに打ち合わせに時間をかけるのですか」という質問を受けた。友人は3回程度の打ち合わせで、新築の総てが決まったという。メーカーも含めビルダーは工程をスムーズに進めるため、殆どがマニュアル化されており、選択肢を少なくすることで、短期間で惑わずゴールに至る。多忙なお施主さんにとっては、それもサービスかもしれない。


 
しかし生涯に一度あるなしの住いづくりである。設計・施工者とコミュニケーションを密にし、共に考え悩んだ末に得たわが家の達成感は、一味違う。家族を育み世代を紡ぐ住いは、やがてかけがえのない故郷になる。

 
(「木族」2014年10月号より)

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