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国産材コラム

空間の「質」を大切に

住い考

引き渡し跡半年「25坪の住まい」

 

この間お引渡しさせていただいた25坪の住まいにおうかがいしました。この間といっても、お引渡しさせてもらってから、もう半年近く経ちます。早いものです。

 

お引越しされてから一度もおうかがいしていないので楽しみでした。完成見学会に来てくださった方が『「25坪の家」とは思えないほどゆったりとした空間。だけど納戸も2畳だけで大きくないし、引越しされてから見てみたい』と話されていたことを思い出します。引越し前の状態と変わらない空間ができていることを確信しながらも、少し不安がよぎって…。

 

訪れて見ると、引越し前と同様のゆったりとした空間が!奥さんが収納上手ということもありますが、きっちりと整理され、部屋に余計なものは一切出されていません。食器1枚分の奥行30センチの食品庫も、すっぽりおさまっていました。

 

ものが溢れがちなキッチンですが、造作の配膳台に計画通り、レンジ・炊飯器・ゴミ箱など、すっきり納まっていました。このキッチンには、使いづらい吊り戸棚をつけずに窓を大きく取り、明るさや、庭が見えることを優先しました。収納もキッチンの下にたくさん入れることができるので、吊り戸棚はなくて正解だったらしいです。

 

子供部屋も小さいですが、机・ベッド・ソファなど、無駄なく程よい空間になっています。

 

 

2階のそれぞれの部屋の建具を引き込めるようにし、開放的な空間をデザインしていたので、個室としても、共用としても使える場所にしておいたことがよかったのではないかと思っています。

モノをあまり出さず、すっきりと収納されていると、やはり空間が生きてきます。ダイニングテーブルで施主さんと、住み心地についてお話していたのですが、南から入る風がとても気持ちよくて、夏場は扇風機だけで、エアコンはかけておられなかった様子。南北に設けた窓が効いているのでしょう。

夕方になると、南窓から角度の低い西日が入ってくるのですが、断熱ハニカムブラインドを直射日光の当たる部分まで下げると、簡単に日差しが回避でき、熱もこもらないので快適でした。

 

私個人として今回うれしかったことは、南の外部に面する木製建具についてのお話です。

 

 

 

夏の湿気で木が膨張し少し開閉しにくくなっていました(無垢の建具は、住んで1季過ぎるまでは環境に馴染まないので、たてつけが悪くなります)。アルミサッシと比べて値段も高く、こうしてたてつけが悪くなったり、何年かすると木部を塗る必要があったりするのですが、それでも「木製建具によって外のデッキや庭がつながっているようで、サッシだったらこの居心地の良い雰囲気は出てこなかった。木製建具にしておいてよかった」とお話しいただきました。

 

「アルミのサッシ枠が結露した時も木製の建具だけはしなかった」「予算があれば全部木製建具にしたかった」とも。

 

アルミサッシを庭のある面に利用すると、どうしても無機質な壁が出来てしまいます。せわしない世の中で、利便性よりも居心地の良さを優先して木製建具を選んでいただける。本当にうれしいことです。

 

寝て起きて、食べて、仕事や家事をする。そのルーティンを少しでも楽しむことで、豊かさが生まれてくるのだと思います。

やはり、空間は大きさではなく、質と確信した一日でした。

 
(「木族」2014年10月号より)

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