「その他」コラムの記事一覧
少し木材自給率のことを話します
平成14年には18%にまで落ち込んだ木材需給率が、
平成21年には前年より3.8%上昇して、27.8%となっています。
その部分だけ聞けば、たいへん喜ばしい話ですが・・・・・
中身をただせば、貧しい家庭のエンゲル係数に似て、
景気の低迷で住宅着工数も落ち込み、木材需要も伸び悩んで
いるのですが、外材の輸入量が圧倒的に減少したことで、
ハウスメーカーさんなどの大手が国産材の集成材や合板を使いだしたこと
が木材自給率を上げた一因かと思われます。
木材自給率の用途別内訳は、製材用材が43.6%、
合板用材は24.2%、残りがパルプ・チップとなっています。
一見自給率があがり、林業が潤うように感じるのですが
集成材の用材として買い叩かれれば、ますます厳しい状況に
追い込まれる、とある林業家が話しておられたのが印象的でした。
やはり木材の価値を落とさずに、無垢の木を柱や梁材として
使ってもらうのが一番だとも言っておられました。
そのためには
街の工務店や設計やさんが頑張る必要がありますが、
なによりも家を建てられる生活者の方たちのご理解が
大きく左右するところです。
協会では、国産材へのご理解を深めていただくために
木造住宅講座で「知っていそうで、知らない木の話」を
行っています。 お時間があれば、ぜひ一度お聞きください。
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農林水産省が2013年度予算の要求概算に
国産材の利用促進につながるポイント制を盛り込む
というニュースが流れました。
住宅エコポイントと同じ方式で、国産材を住宅に使えば
使用量に応じて20~30万ポイント(1ポイント=1円)
をもらえるというものです。
要求額は100億円規模ということです。
単純計算で4万~5万件、対象ということでしょうか。
ただし、お金ではなくポイント数に相当する商品を提供
するようです。無事、予算確定を願うばかりです。
ひとりでも多くの人が、まずはポイント取得を目指し、
国産材にシフトしてもらえればいいのですが・・・・
ちょっと国産材の現状にお付き合いください
いま、日本の森林は使われないことで危機状態に陥っています
上の写真は、健康な森林です。間伐などの手入れが行き届き、
木の根元まで光が射し込み、下草も青々と茂っています。
伐期を迎えた生育した木や、生育過程にある若い木など
様々な状態の木々が混在(混合林)し、
競い合って大きくなっていきます。
上の写真はどうでしょうか、
間伐されない林は不気味なくらい鬱蒼とし
空も見えないほど虚弱な木々(線香林)が、密集しています
木々の足元を見れば、陽が射さないため下草も生えず、
「緑の砂漠」状態に陥ってます。
天からの恵みの雨が降っても、地面に浸透する間もなく
山肌を流れ落ちるだけです。
家を建てる人が、少しでも国産材をつかうことで
山が再生するのであれば・・・・・・
そのことで山の緑が保たれるのであれば・・・・
一方、原発事故による森林汚染の問題もあり
一日も早い対策が望まれるところです
だから猶更、
健康な森林を維持していくことが重要な課題なのです
今回のこころみが、
いい意味の起爆剤になることを祈って
タタミよタタミ、タタミさん
タタミ屋さん。
生活様式も座式から腰掛式と変化し、在来木造といえども和室は減少しています。それに比例してタタミ業者も全国的に減少しています。
2003年に約1万5千あった畳店は08年末で約8千件と半減しました。
昔は藁床(稲わら)が主流でしたが、藁が農薬で汚染され弱くなっていることや、ダニやカビなどがつきやすく、現在のようなボード畳(中芯が発砲スチロール)に取って代わりました。
■タタミの工程
部屋の寸法取りをし—-畳床とタタミ表を仕入れ—-
—-畳縁を付け縫製—-敷き込み調整
■タタミ床
現在ほぼ99%は中芯のポリスチレンフォーム(発砲系)を、インシュレーションボードで挟み込んだボードタタミが主流です。他には、中芯がコルク、竹炭、桧チップ、などがあります。
すこし前まではポリスチレンフォームを稲藁で挟み込んだサンドイッチ畳が主流でしたが、ダニなどの発生を懸念し減少しています。
いずれも一般的には防虫シートを畳の上下に張っています。(協会では張りません)
畳表(イ草)も一般には多量の農薬が使われていますが、協会の推薦する省農薬タタミ表は植え付けるときに農薬を1~2度散布するにとどまっています。
熊本(水の子)から取り寄せたものを使用しています。
タタミの染料は
マラカイトグリーンという毒性のある染料で染められていますが、省農薬タタミは昔からの泥染めを行っています。
■タタミの縁(ヘリ)
以前は黒が主流でしたが、粉ダニが発生した時、黒の縁であれば粉が噴いたようになるため、目立たない色・柄ものが出てきました。
■粉ダニ
粉ダニは人を刺しませんが、粉ダニが増えるとそれを餌にするツメダニが発生し、
人を刺します。
■琉球表(青表)
カヤツリソウ科の七島藺(イ)草(多年生草木)[断面が箱型になっている。普通のイ草は断面が円]で耐久性や火気にも強く、ヘリをつけずに
柔道畳や農家の作業場に用いられた。
普通タタミ価格の3倍程度です。
■目積(メセキ)タタミ
琉球畳と間違われるが、最近のヘリなしの半帖
タタミはメセキタタミ(普通のイ草)です。
■縫製
以前は、タタミ床に畳表を載せ、縁を付け畳針で一針一針縫っていましたが、今はインシュレーションボードに針が通らないこともあり、機械縫いが主流です。
■タタミの寸法
各部屋の柱の芯々寸法を測り、それに合わせ製作します。
JIS呼称は・・・
京 間(本 間)六三間 191㎝ 関西、中国、四国
中 間(中京間)三六間 182㎝ 中京、東北、北陸の一部
田舎間(関東間)五八間 176㎝ 静岡以北の関東~北海道
本間の六三間は6.3尺という意味で、
中間(ナカマ)三六間は3尺×6尺という意味です。
田舎間の五八は5.8尺ということだそうですが、統一されてなくて、ややこしいですね。
その為でしょうか、タタミ専用物差し(竹、金尺)が、昔からあるようです。畳寸法に合わせた目印がついてました。
最近は和室も減り、あっても6畳一間と少ないのですが。世の中は巧くしたもので、畳屋さんが高齢化や不況で撤退していることもあり、立川畳さんは多忙を極めているようです。
タタミも日本の誇る伝統文化です、なんとか残したいものです。
新しい年のセミナーのテーマを「失敗に学ぶ」と決定した。
住宅建築に携わり35年、様々な失敗を重ね今日がある。
その失敗を活かし自らの戒めも含め、今伝えておきたいことが数多くある。
失敗は双方の勘違いや連絡ミス、取り違えなど、いたって単純なコミュニケ
ーション不足に起因するところが多い。
ところが最近木材に対するクレームが増えている。
過去において多くの林業家から、木材に対するクレームについて訊ねられた
ことがある。そんな時胸を張って「クレームはありません」と答えられものだ。
しかし、ここにきて不安を覚えるのは、節や割れ反りなどに反応を示す人が
増えたように感じるからだ。
ご存知のように節は枝の痕であり、節にもヒビが入り靴下が引っかかる等の
クレームが発生する。その対応策にメーカーは樹脂などを埋める。
埋めれば埋めたでクレームになる。「サンプルはこんなに節がなかった」も
よく耳にする。プリントでない以上一枚の板に節の数がいくつあるかは誰に
も分らない。節が気になるのであれば高価な無節を使うべき。
スギは多孔質で調湿性に優れている、その反面柔らかくキズがつきやすい。
僅かなキズが気になるのであれば、スギは使わない方がいい。
2~3ヶ月後の訪問でキズの無い家など一軒も無いからだ。
少しでも国産材への理解をと、木造住宅講座を開講しているが、受講せずに
建築に取り掛かった人にやはり国産材に対する理解度が低く、クレームに
発展するケースが目立つ。もっと困るのは、建築士に国産材への理解が
不足していること。
住宅の骨組みは柱、梁で構成され1本1本全て呼吸をしている。育った環境
が違えばそれぞれに違った動きをする。
その関係で木製建具は必ず調整が必要になる。スギや桧の床に新建材の
建具は似合わない。その解消策として手づくり建具を製作している。
建具の面材として貼った杉の単板が逆目だと指摘されたことがあった。
単板とはカンナ屑ほどの薄いスギが合板の上に貼られた製品、
逆さを指摘する意味も無い。
今や木材の加工はプレカットに頼らざるを得ない。その中にあって社寺
仏閣か迎賓館でもない限り1本1本裏だの表だの逆さだのと、こだわった
住まいなど造れるはずも無い。
それが許されないなら墨付けが出来る大工さんに手刻みで加工して
もらうことだ。
今後、国産材住宅を普及していくためには、国産材に理解を示す建築士と
お施主さんを育てることが不可欠。
せっかく広がりを見せる国産材の根を絶やさないためには、何が何でも
乗り越えなくてはならない課題である。
七夕を待たずして、木材業界の綺羅星が天の川を往った。
惜別の情は限りなく、悔やめども悔やめども湧き上がる。運命の強さと儚さ
を教えた人の遣り残した想いはいかばかりか。
山から発信できる数少ないスポークスマンであった。旅立つ数日前にも関東
方面への講演に出向いていかれたと聞く。
田岡秀昭氏(享年60歳)と知り合ったのは6年前、コープ自然派事業連合と
一緒になって立ち上げた「自然のすまい協議会」のメンバーとして活動して
からのこと、いつも笑顔で思慮深く、穏やかな紳士だった。
それが講演会やパネルディスカッションになると、スイッチが切り替わったよう
に雄弁になり山を森を熱く語る。「れいほくスケルトン」の開発、発展に寝食
を忘れるほどの情熱と行動力で東奔西走されていた。
それでも多忙な時間を割いて、大阪の現場見学会には必ずご夫妻で応援
に駆けつけて下さった。
毎年開催する山林ツアーでの雄姿が脳裏に焼きつく。原木市場では6mの
杉丸太の小口に参加者が耳を当て、片方の小口を人差し指で弾き、杉の
多孔性を音が鮮明に聞こえることで体験納得させた。
山林では、古い切り株を指し、この切り株は横に立つ杉の子供に栄養を与え
続け、子供の成長を見届けるように朽ち果てると説き、日頃、山林に交わら
ない都会の人に、杉やヒノキに愛情さえ感じさせるほどに身近に手繰り寄せ
た。6月4日のツアーでの出来事である。
(2011.6.4 山林ツアーでの故田岡秀昭理事長の雄姿)
また、杉が住宅建材として如何に適した素材であるかを、一般に理解され
にくいヤング率やグラフ等、数字を示し納得させた。あれほど腑に落ちる生産
者側からの説明を聞いたことが無い。とにかく木材業界にとって大きな存在
を失なったことに違いはない。
高知県人を誇りにし「福山竜馬はチューチューゆうがネズミや無いき」と苦笑
していた。さだまさしの無縁坂が好きで、酔うほどに周りを魅了した。
土佐町には多くの人を招き惹きつけた「れいほくスケルトン」のモデルハウス
が建つ。残された多くの人も町も「街に森をつくる」を合言葉に、一人の士が
灯した火を絶やすことなく繋ぎ発展させるに何の異論があろう。
ツアー参加者に田岡氏を紹介する形容詞がある「高知県の宝です」林業を
通じ「れいほく」という名を全国区にした功績は大きい。参加者を魅了して
やまないその語り部は後世まで語り継がれるであろう。
「桂月になごり惜しみて」