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「暮らし方上手」コラムの記事一覧

充実した空間で五感と時間を大切に

暮らし方上手

「小さくても豊かに暮らす」

とても曖昧で主観的な言葉ですが、先月開催したセミナーの題目です。

 

住まいづくりでは、ご予算の都合で施工をする面積が限られることが珍しくなく、「小さく」という言葉には、せっかくの夢がしぼんでしまうような良くない印象がついてきます。

 

しかし私が思う「小さく」とは、面積の大小ではなく、大切にしたいことを軸にして、ギュッと詰まった、充実した空間にすることで、ぴったりと身の丈に合った着やすい服を作るようなイメージがあります。ぴったりと合わすためには設計としても知恵を絞りますが、お施主様がご自身で管理できるモノの量を知ることや、価値観に沿ってのモノの整理は必然となります。

 

「豊かさ」は四季や嵐、陽ざし、安全安心、人との繋がりなどを感じられる時間を過ごす、五感と時間を大切にすることではないでしょうか。

 

国産材の杉(無垢材)の床板は柔らかい素材なので傷がつきやすいですが、足触りが冬は温かく、梅雨と夏はさらりと心地がよく、香りは部屋の空気を一変します。年月を経ると段々と味のある飴色に変わる様子も目を楽しませてくれ、私は豊かさを感じます。

 

自分は何を大切にして暮らしていきたいかを明確にすることで「小さくて豊かに暮らす」ことができると思います。「小さくしか」できないと肩を落とさず、諦めないで欲しいです。

 

(「木族」2020年4月号より)

 

 

家族の気配を感じたい

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「自分の部屋、欲しいんやけど」16歳の息子からボソッとつぶやかれました。話を聞くと、リビングにいて何か嫌なことがあったわけでなく、一人っきりになれる空間がただ欲しいとのこと。

 

まあ思春期なので当たり前の事かと思いますが、未だ欲しがったことのない18歳の娘(姉)にも聞いてみると、娘は全然今のままでいいらしく、小学校入学時に机だけ用意をして、2階にふたりそれぞれのコーナーを作っていて、集中して勉強をする時のみ座っていますが、ほとんどリビングで宿題をしたり音楽を聴いたり好きなようにしています。そして寝るのは未だ一部屋に家族4人川の字ですが、娘は一人で寝るほうが不安だそうです。姉弟でも考え方が違うものです。

 

我が家は延べ床21坪の小さな家なので、現在納戸にしている部屋に置いているモノを片づけないと息子の部屋の確保ができませんし、婚礼家具を置いているので耐震対策もしないといけませんが、学年が変わらないまでに子供部屋にする予定です。

 

小さい家を広く使いたくて間仕切りを極力無くしているので、家族の気配を感じる暮らしに慣れていて、息子の部屋のドアも個室とはいえ開けっ放しになりそうです。

 

最近の新築は、屋根・外壁・床下に断熱材をしっかり入れて、トイレや浴室を除いて家の中は細かく部屋を割るのではなく、家具で仕切ったり、壁もランマ(建具上)は壁が無い状態にすることが多いです。

 

ひとつの空間にするのが温熱環境では理想的で、建具も少なくなりコストカットにもなります。部屋を仕切らないので、家族の気配を感じられるのが良いとするか、プライバシーがないと感じるかは難しいところですが、主寝室や子供部屋の考え方も変わってきていると思います。

 

(「木族」2020年2月号より)

ぜひ梼原へ、ファンになりますよ

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協会恒例の高知県梼原町ツアーも今回で8度目。昨年初めて雲の上の図書館を訪れた時は、隈研吾さん設計の空間を満喫しましたが、今年は時間帯が前回と違い、町の人たちが図書館を利用する普段の姿に触れることに。

 

土曜日の午後、子供たちが本を読むだけでなく、宿題やゲームをしたり、途中に外で遊びたくなったのか、床に本やノートを開けたまま、ゲーム機もそのままに、図書館前の芝生でドッジボールをしている姿は活き活きとしていて、学校の休憩時間の運動場のようでした。

 

館内2階には小さくテーマに沿ったコーナー室があり、ポツリポツリと人を駄目にする椅子(ご存じですか?)が。人目から少し隠れるところで傍らに読みたい本を積み重ね、膝に本を広げたまま心地良すぎてうたた寝している大人の姿も微笑ましい限りです。

 

この図書館が町の人々から愛され暮らしの一部になり、豊かな空間に豊かな時間が流れていることに感銘。建築はこうでありたいものです!

 

見学時、ツアー参加者から素敵なお話もありました。旅行先の図書館へ行くのがお好きで、その地域の史書を読み、地域に対する思いを深められるそうです。梼原町も入ってすぐの一番目立つところに町の歴史が分かる本が並んでいることに気がつきました。

 

タイミングが合えば是非とも梼原町ツアーにご参加を。ファンになるに間違いありません。

 

(「木族」2019年12月号より)

秋、お片付けの季節です

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お片付けといえば、年末をイメージされる方もいると思いますが、今のように気候のよい秋や春に作業をするほうがとても効率よくできます。

 

住まいづくりのお話しをしていると、よく「実家が片付いてなくて・・・」「若い頃はまだちゃんとしていたけど、歳を重ねるとあちこちにモノを置きっぱなしにして子供から𠮟られてます」と両方からの声を耳にします。子世代としては手伝いたくても自分の生活が忙しく、親御さんとしては、わかってはいるけど億劫で体力気力ともに手を付けられないのでしょう。

 

1月に母の3回忌も終わり、気持ちもやっと落ち着いたので、先延ばしにしていた母の衣服の整理をこの春にしました。母は近所のサークルで裁縫を習っていたので、ほとんどが手作りの服。手に取ると着ている母の風景が思い浮かび、幾度も手が止まってしまい、思っていた以上になかなか辛い作業でした。母の好みや体型にあわせた服は誰も着ることができないので、思い出にとっておく数枚以外は全て処分することに・・・。

 

歳を重ねてモノも多くなり、快適に生活することができなくなっている親御さんを持つ方、お忙しいでしょうが、一緒にお片付けする時間を作って欲しいと思います。時には喧嘩にもなるかもしれませんが、それもいい思い出です。そして親御さんも、快適にするための片付けを少しずつでもこの秋の日に始めてみませんか?

 

(「木族」2019年10月号より)

伝えるのが難しい「心地よい住まい」

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国産材住宅推進協会の歴史からすると未だひよっこですが、木族に寄稿し始めて6年、堺セミナーはこの8月で第81回を迎えます。最初は緊張して準備等にも時間をかけていたように記憶しています。最近は、同じような事を書いたり話したりで「慣れ」があり、私自身が停滞したような気持ちになっていました。

 

そんな時、テレビで紹介されていた神戸の国産アウトドアブランド・finetrackのことを初めて知り、改めて私の初心を思い出しました。

 

finetrackの金山社長は、少年時代から山登りが好きで、有名アウトドアブランドで山を登る時の服を長年担当されていましたが、メーカーの「売れる服を売る」という考え方に違和感を感じ「どこにもない全く新しいモノを。山に登る人が欲しい服を作りたい」という思いで、アウトドア好きのスタッフと共に無名ブランドからスタート。

 

15年経った今では山登りをする人で知らない人はいないぐらいの人気ブランドで、その服を着た人は「着心地がよくて、もう他の服は着れなくなる」と言います。それに国産にもこだわっています。

 

私はハウスメーカー勤務の時に「家は商品」ということに違和感を感じ、行きついたのが今の国産材での住まいづくりです。服と違ったところはありますが、目指すところは同じだと感じました。

 

私の初心は「心地よい住まいをつくる」。

 

「心地よい」という言葉は、曖昧で感覚的なので、表現が難しく、セミナーのタイトルにもしにくいところです。心地のよい住まいにするための大切なことを言葉にして、この紙面やセミナーでお伝えするのはもちろんですが、一番わかりやすいのは見学会で体感してもらうこと。見学会は、お施主様のご厚意で実施される貴重な機会なので、是非ともこれを逃さずに心地よさを体感しにご参加いただければ嬉しいです。

 

(「木族」2019年8月号より)

 

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