戸建ての建替えやリフォーム、リノベーションのご依頼でご自宅にお伺いして、暮らしにくい間取りだなぁと感じることがよくあります。住まわれている方はそれに合わせているので、ほとんど気付かれていません。そして、なんだかモノが片付かない、収納が少ない、家事で疲れる、ただ生活しにくい…と言われます。
新築時の暮らしを考えていないプランが原因の時は、同じ設計者として責任の重さを感じます。一から建て替えをする時や思い切ってリノベーションができればすっきりと解決しますが、予算に合わせての小規模のリフォームの時はもどかしい限りです。動線を考えて家具を移動し、適材適所に収納を設えることが関の山で、この間取りじゃなかったらなぁ…と溜息がでます。
新築の年代によっては、暮らし方の変化で間取りが合わなくなっている場合もあります。古民家によくある田の字型の和室では、建具を使って柔軟に小さくも大きくも使えますが、個人の部屋としては落ち着かないですし、収納も少なく、コンセントの位置にも困ります。続き間の和室が一番日当たりのよい場所にあっても、滅多に使わない客間や仏間になり、普段の生活の場は日当たりが悪いところになります。これらの場合は住まわれている方も知るところで、大規模なリノベーションになり、ご予算とのにらめっこ。
一昔前の住まいは廊下と個室で細かく区切られて、プライバシーは守られていても風通しや採光が悪く、思い切ったリノベーションでないと解決できないことばかりです。
生活動線がシンプルで、風の流れや太陽の動きも見据えた間取りが一番だと痛感しているこのごろです。
(「木族」2020年8月号より)