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国産材コラム

猛暑…無理なく自然に向き合って

朴訥の論

西日本豪雨災害で多くの死者が出た被災地に猛暑が追い打ちをかけ、熱中症が続出していると聞く。統計によると熱中症の60%は屋内で起きている。環境省はクールビズの観点から室温を28度に設定することを奨励していたが、あくまでも目安とし体感での調整を促している。

 

断熱性能を高めれば冬季の快適性はアップするが、外気温が上がれば自ずと室温は上がるため夏季には室温を下げる工夫が外せない。自然の通風か、クーラーに頼るか、窓からの日光を遮る、打ち水などで気化熱を利用など、自分に合う方法で断熱・遮熱に取り組んでほしい。

 

 

 

断熱と言えば今も鮮明に記憶に残る家がある。

 

20年前に「できるだけ金額を押さえて欲しい。残りの人生を住宅ローンの返済だけで終わりたくない」という方がいて、自然素材を使いコストをどこまで押さえられるかに挑戦した。

 

10年前に中古住宅を購入し、子育ての過渡期を経て建て替えるという計画を実践された。居間の壁にはそれを象徴するように10年間の落書きが大胆に描かれていた。神戸の奥座敷に位置し、山林を切り開いた裏庭は時折、雉やイノシシが顔を出す。その方を理解するには現況の住いから学ぶことは多い。まず設計による経済性から切妻屋根とし、内部もごくシンプルに提案したまでは良かったが、ローコストを目指しながら、途中からはコストアップに繋がる要求が目立ち始めた。

 

浴室はモルタル仕上げに据置型のバスタブとし、裏庭に直接出られる掃出しの開口を設け、浴室のリビング側をガラスにすること等々。アップした価格の調整を計られたのか、内壁下地の石膏ボードが嫌だから筋違や断熱材が見えた状態でよい、と主張された。

 

さすがに断熱材が見えるままで完成とする勇気もなく外断熱にし、筋違が見える形で引き渡した。冬季の気温は大阪市内と比べ10度は低く、床下と壁面からの隙間風を懸念し、内壁を施工するよう説得したが受け入れられなかった。入居後、早い時期に自分で施工すると言われていたが、その後施工された様子はない。計画時、あらゆる本を読破され、それに翻弄されたようにも見受けられた。

 

昨年春、夫人から「夫が亡くなり、家を売却しました」というお便りをいただいた。20年間寒い冬を過ごされたと思うと、もっと強く推すべきだったかと後悔する。

 

自然と向き合い暮らすことは一つの夢でもあるが、無理のない程度であってほしい。住いは第三の皮膚でもあるのだから。

 

(「木族」2018年8月号より)

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