コープ自然派・ピュア大阪の「食のめぐみフェスティバル」に参加し、スギ、ヒノキ、ヒバの3種の鉋屑で創るバラやタンポポの造花「鉋華」が人気を呼んだ。視覚、触覚に加え、それぞれの香りを嗅ぎ分け嗅覚も養う。
集う人々は自然好きで国産材にも関心が高く、今回も多くの質問を受けたが、やはりヒノキへの憧れは強く「スギは弱い」というイメージは残る。
今年も高知県ゆすはら町への山林ツアーが行われた。山に触れスギ、ヒノキを身近に感じて欲しいと30年前から行っている。梼原へは5回目になるが、今回は建築家・隈研吾さん(梼原に多くの建造物)の魅力もあってか、建築士さんの参加が目立った。
バスは淡路島から徳島に入り高知自動車道を須崎方面に走るが、途中「大豊」の降口に差しかかると、必ずと言っていいほど動悸がする。
6年前までの山林ツアーは、嶺北の製材所を訪れていた。その製材所は大豊を降りて早明浦ダムを目指し、土佐町に入る。代表の田岡秀昭氏(故)は6年前に志半ばで亡くなられたが、亡くなる2、3カ月前に東京での講演資料を参考になればとわざわざ送って下さった。
そこには「日本一の木材は土佐なり」と評した豊臣秀吉のエピソードに始まり、戦後の拡大造林を経て、使われないことで山の手入れも行き届かず、緑の砂漠になりつつあると、と山の危機を訴えるストーリーが綴られていた。嶺北の現状や、スギが敬遠される理由、弱いとされているスギの強度を解き明かす内容が盛り込まれている。
スギは弱いのではなく、強度にバラつきがあることで懸念されるが、強いとされる米松E110と杉のE70は曲げも、引っ張りも圧縮も強度的にはほぼ変わらず、同じE70なら杉の方が強いという試験結果が出ている。
<E110とは、木材のたわみ難さを表す数字で、数字が大きい程、たわみ難く、E(ヤング率)は木材の強さの尺度を表す>
最後にお会いした時、田岡氏から聞いた話がある。今ようやく国産材に大手建築会社も目を向け始め、国産材の自給率は伸びているが、1本の木を建築の柱や梁材として使わない限り、集成材の心材などに使うのでは買い叩きが始まり、山が潤うことはない。山が活性するには、街の工務店なり設計事務所に1本の木をそのまま活かす在来木造住宅を建ててもらうことだと語っておられた。
今回のツアーでも梼原森林組合で、スギのヤング率の説明を聞いた。今思えば、あの講演資料は引き継ぐ人に託された田岡氏の魂のメッセージであったような気がしてならない。