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国産材コラム

「一坪里山」小さな庭の大きな志

朴訥の論

フキノトウに始まり、コゴミにうるい、ウドや菜の花といった少し苦味のある山菜を口に含めば、春を先取りしたようで日本人で良かったとさえ思う。

 

(フキノトウ)

 

30年前に、たんぽぽの道を残そうと言った人がいて感銘を受けたことがあったが、現実はそれほど甘くなく神戸の震災で吹っ飛んでしまった。そのタンポポも外来種が多く、ニホンタンポポは少なくなったと聞く。タガメやゲンゴロウを見かけなくなって久しいが、植物の世界も絶滅の波で浸食が進む。

 

日本に自生している植物は7000種あり、その内の約2900種(40%)が日本に分布する固有植物だそうだ。7000種のうち1690種が絶滅危惧植物に指定されており、日本固有植物の4種に1種が絶滅の危機に瀕していることになる。馴染みのあるキキョウやリンドウまでも絶滅危惧種だと聞けば、穏やかではいられない。

 

除草剤を散布している田畑に野草は育たず、川も道もコンクリートで固められ、市民公園に植えられているのはその地域の固有種の木でもなければ、在来種の草花でもない。今や空地という空地は外来種に支配され、もはや残されているのは各戸の庭でしかないとまでいう。それを憂い6年前から「一坪里山」を提唱する人がいる。(新建ハウジング)

 

在来種の草花や地域固有の木を育てるには、こまめな手入れを要する。各戸で始めれば、そこが在来種にとって最適な基地となり、地域に残す道につながる。育てたものを株分けし、地域に広げることで根絶やしは免れる。生物多様性とは、その地にあるものはあるままに残そうということであり、どれほど小さな生物であっても、存在することで生態系が保たれ、その連鎖を受け継ぐ役割を担っている。生物多様性の危機は「空を飛ぶ飛行機から次々にリベット(鋲)を抜いていくようなもの」。すぐに影響は出ないがいずれ限界に達し、やがて飛行機はバラバラになる。(ポール・エーリッヒ)

 

見事に手入れの行き届いた立派なお庭も素晴らしいが、春秋の七草や、子供の頃、野原で当たり前に見かけたつゆ草やレンゲソウなど素朴でどこか土の香りがする草花も良い。

(レンゲソウ)

わが家の小さなベランダの「気まぐれプランター」には、ハコベとカタバミが蔓延るが、見方を変えて在来種と思えば、何かしら健気にさえ思える。

 

大きな庭で無くてもいい、華やかでなくてもいい、そこは大きな志を繋ぐ庭になる。

 

(「木族」2015年4月号より)

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