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国産材コラム

「空き家」考

朴訥の論

築100年を経過した古民家のチェック依頼を受けた。

里山に建つ茅葺の平屋に2階建てを建て増し、渡り廊下で繋いでいる。1人暮らしの老人が1年前に亡くなられ、棲み継ぐ人もいないまま空き家になっていた。相談された方はそこを購入し、リフォームを望まれた。

(文とは関係ありません。)

 

 

しかし茅葺に被せた鋼板屋根も、2階建ての瓦屋根も老朽化が酷(ひど)く葺き替えには莫大な費用が嵩(かさ)み、構造の傷み具合を考慮しても中途半端にお金を投入することが良いという判断には至らなかった。

 

1年経った今もその暮らしぶりが偲ばれ、生活用品と共にご遺骨こそなかったが、お仏壇も遺影もそのままに残されていたことにショックを受けた。

 

兎に角、人の住まない家は傷みが加速する。10年間空き家にしていた家をリノベーションしたことがあるが、小屋裏に巨大なスズメバチの巣や、青大将が棲みつき、大工さんは腰を抜かさんばかりに驚いたようだ。

 

日本経済新聞によれば個人住宅の空き家は2008年で約270万戸となっている。

空き家を管理する会社も増えているが、賃貸するにも補修する費用が負担になり、手つかずのまま朽ち果てる家もある。

 

国の指針で、国土交通省は、借主が自己負担で補修や設備の入れ替えをすることで安い家賃で借りられる「借主負担DIY型」の賃貸向けガイドラインを出した。所有者も初期投資なしで賃貸できるというメリットは大きい。

 

ますます空き家は増加する傾向にあるが、賃貸を望む子育て世代は賃貸向けに簡易的に行う化学物質まみれのリフォームに懸念を抱く人も多い。このシステムが定着すれば、賃貸でありながら自らのこだわりをリフォームに反映させた、愛着の湧く我が家に変化するのではないだろうか。

「まったく同じような吉相の間取りに棲んでいても、幸せになる人となれない人がいる。この違いがどこにあるか、といえば、家をこまめに掃除し、家に感謝し楽しく暮らす努力をしているかどうかだ」と風水のDrコパさん。「家は不思議なもので感謝をしながら丁寧に使っていると居心地よく感じられるもの」と語っている。

 

風水の奥深いところまでは分からないが、愛着のあるなしで掃除の仕方も違ってくる。たまには「ありがとう」とわが家に感謝を伝えたいものだ。

 
(「木族」2014年8月号より)

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