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国産材コラム

猫の住環境

朴訥の論

築85年のリノベーションで猫部屋を設けたN様が、創って良かったと喜んでおられると(現場)監督から聞いた。

 

近年、ペットは犬をおさえ猫ブームのようだ。散歩の必要性がなく、犬と比べて経費が掛からず長寿命というのも人気の理由らしい。

 

ただ出来れば半外飼いでなく、事故や伝染病などの観点からも完全室内飼いが望まれている。また猫は快適な環境を何よりも重視する動物だとも聞く。

 

今回のリノベーションは連棟の平屋を一軒にまとめる施工だったが、片方の玄関を潰し、ガラス張りの猫部屋に充てている。小部屋は陽当りも良く、猫たちが遊べるキャットタワーを設け、外からも眺められるようになっている。ご近所の方も通りすがりに覗いては猫の様子を楽しんでいるとか。

ともすれば閉鎖的に成りがちな日本家屋で、外に開かれた部屋を造るにはいささか抵抗があるが、設計者の意図はあくまでも猫目線で「猫も外を眺めたいだろう」だった。

 

プライベートゾーンとの仕切りはあるもののその提案にOKを出されたお施主さんがあってのこと。

 

先日、新聞に犬、猫のペットを飼っている高齢者は、飼っていない人に比べ介護費が半額に抑えられていると載っていた。460人の調査結果で分かったそうだ。調査研究に当たった国立環境研究所の主任は「高齢者がペットを飼いやすい環境を整えることが、社会保障費の抑制につながる」と述べている。

 

それを立証する意味でも杉の床板は逸材と言えるだろう。キズを懸念する人も多いが、それを超える心地よさがある。

 

話は変わるが、35年前に柴犬を飼ったことがある。多忙を極める毎日に癒しを求めての事だったが、2年経った頃、引っ越したマンション(3階)のドアを開けた瞬間、猛ダッシュで階段を走り抜けていった。近所を探し回ったが、二度と戻ってくることはなかった。

 

何やら犬に三下り半を下されたようで落ち込んだ。今思えば自らの利ばかりを求め、犬の住環境を考えるなど思いも及ばず、ストレスを溜めていた結果だと納得できる。

 

一人暮らしが増え、老若男女を問わず孤立しがちな社会、自分を頼るものの為に責任を負うことで生活にリズムと潤いが生まれる。

 

人間も犬、猫も寿命は年々延びているという。縁あって暮らしを共にする以上、最後までいい絆で責任を全うしたいものだ。

 

(2023年木族4月号より)

 

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