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国産材コラム

亡き母の寂しさを思う日々

暮らし方上手

春は出会いと別れの季節です。我が家の長男が念願の一人暮らしをすることになりました。3年前に自分の部屋ができてすぐに「大学では一人暮らしをしたい!」と言った長男です。一喜一憂した受験でしたが、地道に努力をして思いが実りました。

 

合格して喜んでいるのも束の間、短い期間で入学準備をし、下宿先を決めないといけないので慌ただしく、ましてや慣れない土地でのことで、長男だけでなく私たち夫婦も右往左往しています。

 

30年前、私が結婚で実家を出てから3か月経った頃、一人暮らしになった母から一通の手紙が届きました。未だ携帯電話の無い時代ですが、用件は電話でも済むだろうに何だろうか?と思いつつ封を切ると、「なんてあなたは薄情なんでしょう」ということを綿々とつづった思いがけない手紙でした。そんな手紙が来るとは予想もできませんでした。

 

そのころ私は、フルタイムで仕事をし、慣れない通勤の道のりや、今までしたことの無い家事に奮闘しながら目まぐるしい日々を過ごしていました。確かに母に対し「元気にしている?」と声を掛ける余裕もありませんでした。

 

すぐに謝りの電話は入れましたが、若い私は「こんなに頑張っているのに、私の様子も分かってもらえないのか‥」と母の寂しさより私のことを分かってもらえない悲しみを強く感じた苦い思い出です。

 

今ではその時の母の寂しさが痛い程分かり、本当に悪いことをしたと今更ながら亡き母に謝り直したい気持ちでいっぱいです。

まだ引っ越し前なので、長男の巣立ちの実感はないですが、一つ一つ手続きが進み、刻々とその時が近づいています。親の皆が一度は通る道なんでしょうね。

 

(「木族」2022年4月号より)

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