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国産材コラム

値段は嘘をつかない

朴訥の論

長雨とコロナ禍に落ち着かない日々が続いていますが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

 

先日、そうなるとは分かっていながら安価につられスーパーでワンパック100円の卵を買った。案の定、黄身は膨らみを失っていた。いまや一般に食への意識は高く、大抵の主婦は、余程のことがない限り「値段は嘘をつかない」ことを良くご存じだ。

 

しかし、住宅に関してはどうも風向きが怪しくなる。形状・仕様内容など全く違うものを比べ、高いの一言で評価されることがある。とかく自然素材は扱いにくく、その良さを理解してもらうには、説明を重ねるしかなさそうだ。特に木材に関しては、工業製品に慣れ親しんだ人にとっては、僅かな狂いがあっても許しがたい。

 

長きにわたり無垢材を理解してもらうため、セミナーなどで説明してきたが、世代が変われば伝わらず、繰り返し伝え続ける必要がある。

 

 

ネットや文献で知識を得ても、現実に体験しない限り理解は得られない。杉床板の施工方法一つをとっても、下地や接着剤に何を使うかによってはひびが入ったり、床鳴りがすることがある。それを回避するために生産者さんはウレタン系の強力な接着剤を使うことを推奨されているが、それも説明をしたうえで施工しないと、後で問題になる。あちらを立てればこちらが立たずである。

 

かつてセミナーの基礎工事の話で、鉄筋の適切な太さを伝えたところ、現場でゲージを当て口径が足りないとクレームに発展したことがあった。何のことはない異形鉄筋であったため事なきを得たが、数字はわかりやすいが、自然素材であればなおさら、数字で表現するのは難しい。

 

木材の収縮も一律に起きるわけでなく、それぞれの性質により収縮にもバラつきがある。許容範囲とうたっても施工側と使う側で許容範囲にも感覚のズレがある。

 

好評を得ている塗り壁材「そよかぜ」は、ビニールクロス一辺倒の住まいづくりに一石を投じたかったことと、微力ながら左官技術を守りたい一念で開発されたものだ。しかし、施工時の温度や湿度、風の当たり様でヘアークラックが入ることもある。利用者に寛容になって欲しいとは思うものの、それのみに甘んじる訳にもいかず、悩みはつきそうにない。

 

板材にしろ「そよかぜ」にしろ、それでも使わずにおれないのは生産者のたゆまぬ時間と労苦、代えがたい価値を知っているからに他ならない。

 

 

(「木族」2020年8月号より)

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