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国産材コラム

山林のさだめにも似て

朴訥の論

日本の四季は多くの文化を生み誇れるものだが、年々春秋を愛でる期間が減少しているかに感じる。数年前から地殻変動の活発化が懸念されてはいたが、最近の地震の惨状は目を疑うものばかり、特に北海道胆振東地震の山の崩落映像は立ち眩みを覚える衝撃だった。

 

今年6月に起きた大阪府北部地震(M6強)で罹災した家屋の修復がまだ終わらない内に、追打ちをかけて9月に日本列島を襲った台風21号は第2室戸台風並みの威力で、樹木も家も車もなぎ倒した。

 

出入りの屋根屋さんに相談を寄せている被害相談は、地震時の200件に、台風による300件を合わせて500件に昇る。建築士事務所民家への検査依頼も35棟を超え、スタッフは応急処置のブルーシート張りに追われた。

 

 

木造住宅講座でコストやメンテナンス性を考えて、複雑な形状の屋根はやめた方が良いと伝えていたが、それを証明する結果となった。切妻屋根であれば棟瓦や平瓦に被害があっても比較的に補修はし易いのだが・・・。

 

 

台風の直撃を受けた須磨の親戚宅も被害が大きく、築43年の屋根は棟瓦も飛散し酷い雨漏りにみまわれた。形状が複雑で谷が多く、浜風による塩害か鈑金の劣化もあり葺き替えを勧めたが、子供達も独立し遠方で暮らす為、一代限りで売却することになり、屋根の修復に莫大な費用はかけたくないと言う。

 

近年の瓦屋根は耐震・台風を考慮し、様々な工夫がされているが、葺き替えには仮設足場を要し、築40年ともなれば、どっさり積まれた土と瓦を落し、屋根下地を調整したうえで新しい屋根瓦を葺く、新築と比較しても作業工程が多く、費用は増大する。入母屋であればさらに役物や装飾瓦が加算される。35件の内30%の家が同じ悩みを抱えていた。

 

日本人は家を建てるまでは一生懸命になるが建ててしまえば殆どメンテナンスをしない国民だと言われてきた。災害保険に満足な形で加入している人も少ない。

 

年々気候変動が激しく台風も巨大化する傾向にあるとすれば、日頃からのメンテナンスもさることながら、建築計画の段階からメンテナンスを考慮したデザインや素材の選択が不可欠になる。

 

百年、二百年を耐え、何代にも渡って受け継がれてきた古民家を易々と潰していいものか、古民家を負の遺産にさせないためにも愛情を込めたこまめなメンテナンスはかかせない。

 

どこか山林のさだめにも似て憂う。

 

(「木族」2018年10月号より)

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