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国産材コラム

数字だけではない家づくり

暮らし下手

2025年から新築住宅の断熱等級4の義務化が予定され、住宅の温熱環境や家づくりの工法まで大きな転換期を迎えています。

 

建築士事務所民家としても、自然素材を活かした高気密高断熱の家に取り組み、長期優良住宅・許容応力度計算による耐震等級3と断熱等級6を標準とし、温熱環境の計画を含む家づくりの体制を整えてきました。今年からは断熱・気密計画を専門に取り組んでいた仲間も加わり、現場・設計共に確かな土台が固まってきました。

 

ただ、こうして住宅の性能について文字にする事も珍しく、セミナー等でも表立って話すことをほとんどしていません。それは、住宅を数字や性能で評価したり判断することが、特に住宅の”商品化”に直結してしまい、目指す家づくりの本質が見えなくなってしまうことを懸念しての事です。

 

現在計画している新築の家では、松の丸太梁を再利用し、和室の意匠の裁量を大工に任せて頂けることになりました。リビングで見せる化粧の松の丸太梁は荒々しくも質感が豊か。でも曲がった松梁と天井の取り合いは気密が取りにくい。

 

倉庫で大工さんと悩んでいると、こんな気密部材をつかえば上手くいくのでは?と新しいアイテムを施工担当者が提案してくれました。和室の天井もちょっと面白くしてやろうか、と大工さんの企みに、そこは構造がこうなるからこっちで、手が入らないから、作る順番はこうして、気密はここで確保して・・・と、設計、施工、大工との三者で、性能や構造、意匠性の意見をぶつけながら方法を模索します。気づけば外も真っ暗で現場用の照明の下で遅くまで図面を囲んでいました。

 

性能だけを優先すれば、大工さんの粋な提案も、やめておこうの一言で終わってしまうところを、誰一人ゴールを変えずに道を模索するところに、そうそうこれが家づくりだよねと、心の中でニンマリする場面でした。

 

(建築士事務所民家・設計部=中津真)

~2023年木族10月号より~

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