親が存命する人を「子」と考えれば、総人口の70%、
8千7百万人いることになり、見方を変えれば総子化だと
日経新聞に載っていた。現在、「子」の平均年齢は33歳に
なり、20年後には平均年齢は40歳となる。大人の親子が
世の中を占拠する。どうせなら高齢化を嘆くばかりでなく、
家族間の交流を計り、共に楽しみ、家族の力を生かす方向に
転換したいものだと結ばれていた。
阪神淡路大震災の前年に北摂で新築をされ、築18年を
経過し、外壁塗装の依頼を受けた。完成前に久しぶりの
訪問をさせていただいた。ご夫婦で教職につかれていたが
定年退職され、当初から奥様はバラの栽培を趣味にしておられ、
毎年品種の違った様々な花を咲かせ地域に甘い香りと潤いを
もたらしていた。
ご主人はその為に設けたという2室続きの和室に知人を招き、
大好きな和食を料理し、もてなすことを喜びとされている。
「おかげさまで2人とも健康にも恵まれ18年間で延べ4千人
のお客様をお迎えすることができました、感謝しています。」と
ご挨拶をいただいた。4千人と言えば半端な数字ではない。
年平均222人の来客を接待したことになる。
バラの季節になれば子息やお孫さん、友人知人を招き、
お手製の食事会を恒例にされている。現在は地域のお父さん
20人に、男の料理を伝授しているそうだ。
「ボランティアですが、呑みたい為にやってるようなもんです」
と屈託がない。
さぞかし奥様は大変と以前訊ねたことがあるが「好きに
やってもらってます」と実に大らかに話しておられた。
住いに安全安心は外せないが、大切なことは家そのもの
だけでなく地域にどれだけ融和し、暮らしやすい環境を
どう整えるかではないだろうか。孤立した中では人は
生きにくい、安心安全は家の中だけではない。地域と
交わってこそ得られる安心もあろう。
欧州ではギリシャの債務危機が引き金になり、政治家は
脱却に「成長」を唱えるが、一般に「成長に幸せを感じない」
という声が広がり、市民は真の豊かさを問い始めているという。
人生で培ってきたそれぞれの能力を地域に還元し、
老いたればこそ輝く桜花もある。