国産材コラム

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「その日ぐらし」コラムの記事一覧

まだ慣れない現場の尺貫法

その日ぐらし

建築現場ではさまざまな単位が使われ、熟練の大工さんは「尺貫法」を用います。

 

1尺は30.3センチ、約して30センチで換算しても「何尺何寸何分」なんて急に言われると何ミリなのかが追い付かず、「何ミリや!」と秒速でミリ換算する大工さんは、さながらバイリンガルのようです。

 

現場でよく使われる「すんさん」と呼ばれる角材は、1寸3分のことで39ミリ(挽き歩で減るので実寸は33ミリ)。「さんごかく」と呼ばれる柱材は3寸5分角で、10.5センチ角。ちなみに国産材住宅推進協会では、柱は「4寸」=12センチ角を標準としています。

 

面積の平米(㎡)を坪換算するときは「3.3124」で割り、何度も使うので頭にこびりついています。

 

図面を書くときはミリ単位を使うため、普段使わないセンチを使おうとして「柱材は120センチを使っています」と、ド派手に言い間違えたりします。部屋の広さは「帖」、間口は「間」、土地の広さは「坪」、あんまり広いと「東京ドーム何個分」。

 

メートル法で統一される日はいつか来るのでしょうか。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2023年木族8月号より~

「増え続け」て心配

その日ぐらし

築20年経った長崎の実家はそろそろ外壁が補修の時期を迎えていました。しかし父は昭和の頑固親父で「そんなのまだ必要ない」の一点張りで母を困らせていました。

 

そんなある日、飛込みで外壁リフォームの営業マンがやってきて、これも何かの縁と父はあっさり契約。こちらでは考えられない程の安い施工費が余計に怪しく、この時話を聞いていたら絶対反対したと思います。

 

しかし、その業者は毎日写真と共に工事の進捗状況を報告し、とても仕事が丁寧だったとか。足場を立てるために外した父の自作の葡萄棚の屋根まで、わざわざ大工さんが立派に直してくれて、父もえらい喜んだそうです。工事の様子を見ていたご近所さんから新たな仕事をもらえたと、最後は菓子折りまで頂いたそう。

 

固定概念を持ってはいけないと感じたものの、太陽光温水器とか、ミシンとか、帰省する度何かが増えており、飛込み営業マンの話で契約しがちな両親に心配が尽きません・・・。

 

(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)

~2023年木族6月号より~

ピッカピカ以外に

その日ぐらし

我が家の浴室のシャワーの水栓が水漏れするのをきっかけにキッチン、洗面、浴室の水栓を一気に取り換えることにしました。

 

キッチンの水栓はレバーを操作するたびカウンターがびしゃびしゃになるのでタッチレス水栓に。浴室の水栓は細かい気泡がでるシャワーヘッドに。と、ここまで順調に決めたのですが、問題は洗面の水栓でした。

 

うちの水栓はボウルから生えているのですが、スポンジでこすり過ぎて傷だらけになっています。そのトラウマでピッカピカの水栓が苦手で、屋外水栓のようなステンレス仕上げみたいなものがないかと各メーカーを調べ上げ、ショールームも回りました。それでもなかなか見つからずやっと見つけたと思いきや、受注台数50台からとか納期が1年以上とかで、諦めかけた時にH社が1台から受注生産でブラスト処理をしてくれることが判明。それでも半年かかるのですが、1年と比べたらまだ待てます。

 

すでにキッチンと浴室の水栓は届いており、半年後に洗面水栓が届いてやっと工事です。各メーカーさん、ピッカピカ以外の水栓作ってくれませんかね・・・

 

(2023年木族4月号より)

無線塔に申し訳ない

その日ぐらし

今年のお正月は久しぶりに長崎に帰省し、佐世保の西海橋へ行ってきました。橋が近づくと、針生の無線塔が見えてきます。

 

思い返すこと10年程前、飲み仲間とリフォームデザインコンペに応募しようという話になりました。構想のみでも構わないというものだったので、長崎には真珠湾攻撃の暗号電文「ニイタカヤマノボレ1208」が発信されたと言われる3本の無線塔があり、それを現在、過去、未来の発信塔にしたらどうかと提案し、現地調査まで行いました。しかしながら具体案が詰め切れず、グダグダのまま提出。当然入選にかすりもしませんでしたが、暇だったので表彰式を見に東京まで行きました。名だたる設計事務所の実例や模型が立ち並ぶ中、隅っこに我々のしょぼいプレゼンが。まさか貼られているとは知らず、剥がして逃げようかと思いました。

 

総評を語る建築家の「今回応募の中に煙突をリフォームしようとした面白い人がいました」という言葉。無線塔であることすら伝わっていませんでした。おかげで今でも、無線塔を見るたびに申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 

(2023年木族2月号より)

 

 

 

「パース」じゃない?

その日ぐらし

プレゼン資料でパースを描く時、いつも思い出す人がいます。それは20代の頃に勤めていた工務店の社長。パースがまともに描けない私が常々社長に言われたのが

「このへったくそ!!」

でした。私はこの関東弁で、怒ると見た目が鬼瓦になる社長がとても苦手でした。

 

描くたび「このへったくそが!俺が手本を描いてやるから見てやがれ!」の繰り返し。

 

ある日描いたパースの隅に「○○様邸イメージパース」と記載したのを酷く怒られ「てめぇのはただのラフスケッチだ!俺の許可無くパースなんて名乗るんじゃねぇ!」と、書き換えさせられました。

 

その後許可をもらえぬまま社長は亡くなりました。今も描いたものには「○○様邸イメージスケッチ」と記載しています。

CGが主流の昨今、代表は「手書きは温かみがあって好きやで」と言ってくれます。先日私の描いたスケッチを見て、お施主さんが喜んでくださいました。とても嬉しかったです。

 

鬼瓦社長、私はまだパースに昇格出来ませんでしょうか、そんな事思いながら今もスケッチ描いています。

 

(2022年木族12月号より)

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