「暮らし方上手」コラムの記事一覧
お片付けといえば、年末をイメージされる方もいると思いますが、今のように気候のよい秋や春に作業をするほうがとても効率よくできます。
住まいづくりのお話しをしていると、よく「実家が片付いてなくて・・・」「若い頃はまだちゃんとしていたけど、歳を重ねるとあちこちにモノを置きっぱなしにして子供から𠮟られてます」と両方からの声を耳にします。子世代としては手伝いたくても自分の生活が忙しく、親御さんとしては、わかってはいるけど億劫で体力気力ともに手を付けられないのでしょう。
1月に母の3回忌も終わり、気持ちもやっと落ち着いたので、先延ばしにしていた母の衣服の整理をこの春にしました。母は近所のサークルで裁縫を習っていたので、ほとんどが手作りの服。手に取ると着ている母の風景が思い浮かび、幾度も手が止まってしまい、思っていた以上になかなか辛い作業でした。母の好みや体型にあわせた服は誰も着ることができないので、思い出にとっておく数枚以外は全て処分することに・・・。
歳を重ねてモノも多くなり、快適に生活することができなくなっている親御さんを持つ方、お忙しいでしょうが、一緒にお片付けする時間を作って欲しいと思います。時には喧嘩にもなるかもしれませんが、それもいい思い出です。そして親御さんも、快適にするための片付けを少しずつでもこの秋の日に始めてみませんか?
(「木族」2019年10月号より)
国産材住宅推進協会の歴史からすると未だひよっこですが、木族に寄稿し始めて6年、堺セミナーはこの8月で第81回を迎えます。最初は緊張して準備等にも時間をかけていたように記憶しています。最近は、同じような事を書いたり話したりで「慣れ」があり、私自身が停滞したような気持ちになっていました。
そんな時、テレビで紹介されていた神戸の国産アウトドアブランド・finetrackのことを初めて知り、改めて私の初心を思い出しました。
finetrackの金山社長は、少年時代から山登りが好きで、有名アウトドアブランドで山を登る時の服を長年担当されていましたが、メーカーの「売れる服を売る」という考え方に違和感を感じ「どこにもない全く新しいモノを。山に登る人が欲しい服を作りたい」という思いで、アウトドア好きのスタッフと共に無名ブランドからスタート。
15年経った今では山登りをする人で知らない人はいないぐらいの人気ブランドで、その服を着た人は「着心地がよくて、もう他の服は着れなくなる」と言います。それに国産にもこだわっています。
私はハウスメーカー勤務の時に「家は商品」ということに違和感を感じ、行きついたのが今の国産材での住まいづくりです。服と違ったところはありますが、目指すところは同じだと感じました。
私の初心は「心地よい住まいをつくる」。
「心地よい」という言葉は、曖昧で感覚的なので、表現が難しく、セミナーのタイトルにもしにくいところです。心地のよい住まいにするための大切なことを言葉にして、この紙面やセミナーでお伝えするのはもちろんですが、一番わかりやすいのは見学会で体感してもらうこと。見学会は、お施主様のご厚意で実施される貴重な機会なので、是非ともこれを逃さずに心地よさを体感しにご参加いただければ嬉しいです。
(「木族」2019年8月号より)
建て替えや、改装をすることはお片づけをする良いチャンスになります。最近、建て替えをするために仮住まいへ引っ越しされた方が「思い切ってモノを処分したのに、引っ越し後も不要なモノが目に入り、処分しないといけないモノがまだあります」と溜息まじりにおっしゃっていました。改装される方は「これだけモノを置いていたかと驚きました」とも。
どこのご家庭でも、普段の生活で置いていることを意識することがないモノは必ずあると思います。普段の生活の様子を写真に試しに撮ってみて下さい。どれだけモノが見えなくなっているか。改装が終わってから、改装前の写真をお見せすると「こんなにモノが溢れていたんだ」と驚かれることも。
我が家も1階全体の改装だったので、冷蔵庫以外は何も置いていない状態にしなければならず、2階の納戸6畳へ残すモノをほぼ全て入れることになりました。もちろん納戸にも普段使わないモノが多く、片づけはそこから。要るモノを選んで納戸に上げ、残ったモノを集めると「こんなにあるのか」と驚き、市の処分場へ持って行くモノだけでワゴン車一杯です。5年ごとにフリーマーケットに参加したり、買い物でも慎重に選んだはずなのに…。子どもの成長と共に必要なモノも変わります。今は使ってなくても将来のためのモノもあり、中学生を過ぎる頃には一人の大人と同じで、またまたモノが増えます。
私も改装するタイミングでないと思い切ったお片づけはできませんでしたが、改装後は、春・秋に納戸の整理をするだけで、基本お片づけは簡単に終わります。
家具や荷物を除けたり、モノの整理をするのが億劫で、建て替えや改装することを先延ばしされている方も多いと思いますが、それを超えるとお片づけも楽になります。ぜひともそのハードルを越えて欲しいです。
(「木族」2019年6月号より)
春の便り「いかなごの釘煮」が叔母より届きました。今年は不漁で高値なので少しですがと言葉を添えて。亡き母が毎年作って送ってくれていましたが、寂しくないようにと続けてくれている嬉しい春の便りです。
季節を知らせてくれるのに、お庭も大切だとつくづく感じます。管理が面倒で、時に一切緑のない外構を見かけますが、殺伐としていて寂しいものです。決して贅沢でなくても、それに立派に見せる庭でなくてもいいと思います。家庭菜園でもいいし、小さな木一本あるだけで大きな違いです。
恥ずかしながら我が家の庭は猫の額程、畳1帖もありません。我が家の庭のルールは「食べれるものだけ植える」の家庭菜園なので決して見せる庭ではありませんが、ご近所の方から、毎年何を植えて実がなるのか楽しみにしてもらえているようです。夫が管理してくれていて、私もご近所さん同様楽しみにしている一人です。
夏のプチトマトは定番で、木で塾した実をそのまま食べれる贅沢を満喫します。食べたぶどうの種から芽が出て簡単な棚も作り、3年程で小鳥の餌程度の実もなり喜んでいましたが、木も太くなり始めた頃、虫害にあい手立てできず枯れてしまいました。
次にその棚を活かしパッションフルーツを植えると2年目に綺麗な花が次々と咲き、ところ狭しと40個程の実の収穫ができました。実は酸っぱく量も多いのでジャムに。他にも、メロンや苺、じゃがいも、小イモ、お茶の木と、所狭しとチャレンジしています。実のなる木を直植えしたいのですが狭くて無理で、食べたアボガドの種を鉢植えにすると、ぐんぐんと高さ2m程に成長し、花や実は未だ生りませんが、我が家の立派な1本の木になりました。
夫のまめな手入れのお陰で猫額の庭は季節感満載で、今年も何が生まれるのか楽しみにしています。
(「木族」2019年4月号より)
「人生は選択の連続である」シェイクスピアの名言です。住まいの竣工時にお施主様から必ず耳にするのが「1軒の家を建てるのに、こんなにたくさん決めないといけない事があるんですね」というご感想です。
ハウスメーカーのように決まった仕様があれば楽でしょうが、こだわりの家を建てるにはお施主様と一緒に決めていく項目はとても多く、それだけ考え抜いた家だからこそ、皆さん愛着と満足感もひとしお。一つ一つ決めていく過程で、全体のバランスを見ながら提案するのが設計者の仕事でしょう。
材料の選択で最も悩む「外壁」について前回の屋根に続いてご紹介します。
大きく分けて塗装の有無があります。塗装をする材料の方が当初は安くなりますが、性能を保つために塗り替えないといけません。立地条件でも大きく左右されますが、理想では15年ごとに、実状としては20年経った頃に大きく費用が掛かります。ただ、塗替えると新築のように清々しいものです。補修性もとても良く、外壁に関しては水性塗料が主流なので安心かと思います。
塗装をしない素材でよく使うのが、火山灰を使った『そとん壁』という左官材料と『ガルバニウム鋼板』です。30年位はメンテナンスがいらないと言われる素材ですが、どちらも傷がついた時は補修しにくく、できたとしてもそこだけ目立ちます。そとん壁自体はカビが生えませんが、壁に引っかかるホコリ等にカビが生えることもあります。メンテナンスをしないということは傷や自然と共に寂びれていく事を受け入れることが必要になります。
まずは選択肢があることを知り、メリットとデメリットも理解して選んでください。
(「木族」2019年2月号より)