「暮らし方上手」コラムの記事一覧
築20年以上の木造中古住宅の現場を調査あるいは解体した時に、必ずと言っていいほど白蟻(シロアリ)の被害を目にします。雨漏りをしたところや、床下の湿度が高く換気もうまくできていないところがよく被害に合っています。
白蟻は、3つの条件が揃えば、どのお家でも被害にあう可能性があります。それは①床下の湿度が高い②白蟻が好む木(外国産材等)③白蟻が好む(高めの)温度です。
協会では、発足から40年の経験から新築時には湿気が土台に上がらない基礎、また床下の全周換気を行う方法を採用し、床下に使う木材は国産ヒノキ材を使っていて、薬剤を使わずに白蟻の被害を防いでいます。
ただ2~3軒、以前住んでいた家で白蟻被害に遭ったため「心配なので薬剤を」と望まれた方にのみホウ酸系の薬剤を使いました。白蟻を防ぐ薬剤は一般的に5年保証です。
一方、中古住宅で防蟻処理をしたことがきっかけで化学物質過敏症になり、家に住めなくなった方からご相談を受けたこともあります。防蟻処理はしなくて済むなら一番良いのですが、される場合は慎重に行ってください。
新築の家を不動産屋さんからご購入される際に杉板フローリングを採用したいとのことで、我が家のフローリングを見学された方がいました。
その方は初めての住まいづくりで、間取りと住宅設備の使用、またご予算に当てはまることで選ばれたようですが、基礎のつくりや、構造材に使われる木のことも、防蟻処理の方法もご存知ありませんでした。多分これが普通なのかもしれませんが、確認していただきたいところです。
よく「国産材は高いでしょ?」と聞かれますが、長い目で見るとどちらが高くつくのでしょうか?安い素材はメンテナンスで費用がかかりますし、後から取替えできない基礎、木構造、断熱は、初めにしっかりと費用をかけることをお勧めします。
(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)
~2023年木族12月号より~
7月初旬、兄が職場(群馬県)で倒れ救急車で運ばれた、と姉から電話が入り緊張が走りました。兄は5月に還暦を迎えたところ。心臓から血栓が飛び、重度の脳梗塞で左半身麻痺な上、既往症もあり起き上がれず、意識はありますが話せません。その後、2度命が危ない状態になりましたが、今は容態が落ち着き、命が助かったことに感謝しています。
兄は独身なので、末っ子の私がゆくゆくは介護や最期を看ることになると覚悟はしていましたが、20年以上も後と思っていたので、目の前にいきなり何かを突きつけられたようです。
職場の鍵のかかったロッカーに兄の鞄があり、このことを予測していたかのように暗証番号以外の全ての貴重品と健康診断の結果表が入っていました。
兄の住まい(埼玉県)はエレベーターの無い賃貸マンションの2階。兄が退職後に住む予定だった実家(神戸市)もエレベーターの無い分譲マンションの3階。とても悲しいのですが、到底どちらの住まいにも戻れる見込みはありません。兄が帰りたい居場所を早々に無くしていくのも心が痛みますが、誰も住まないのに家賃や経費がかかるのが現実で、先延ばしも難しいです。
携帯電話は、パスワードがわからないので開けず、今では電池切れをしています。職場の駐車場には、通勤用に長年乘っている愛車を停めたまま。
浜松で高齢のお姑さんの面倒をみている姉と、順を追って一つずつ片付けていこうと言っていますが、お互いの仕事や家庭があるのと、遠方なのでなかなか進みません。
よくお施主様から実家終いや、介護の段取り等が大変だったとは聞いていましたが、問題山積で溜息しかでません。できる範囲でリハビリが始まったようです。病院の規則で15分しか面会できませんが応援に行こうと思います。私にできることはそれ位しかありません。
(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)
~2023年木族10月号より~
年々暑さが増しているように感じます。30数年前、実家(神戸市北区)に住んでいた頃は、都心よりも涼しい地域ということもあり、エアコン無しで扇風機だけで問題なく暑さを凌いでいました。その後堺市に住むようになっても、ほとんど冷房を使わずに過ごしていたのが今では懐かしいです。
冷房の風が苦手で、その風にあたると体調を崩す方が、5年前の新築時に「エアコンは使いません」と言われ、電源だけ用意をしてエアコンは取付けしませんでした。
しかし昨年、熱中症対策で渋々エアコンを取付けられたのですが、冷たい風で体調を崩すので、どうしたらいいでしょうか?と今春にご相談を受けました。
断熱材もしっかり入っている家なので、エアコンを少し使えば快適に過ごせるのですが、どんなにエアコンの設定温度を上げてもエアコンの風は冷たく冷たく感じられるようで、かといって扇風機では室温が下がらないので困られていました。
風が出ない冷房機「クール暖」という輻射熱を利用した製品が良いのではと思い提案しましたが、器具設置で部屋が狭くなり、部屋の使い勝手が悪くなるので計画段階で断念しました。
他にも色々と検討した結果、ご本人が一番しっくりときた方法は、とても非効率ですが、エアコンを設置して隣りの部屋で過ごし、間接的に隣りからサーキュレーターで送風し、部屋の吸気口を開き換気扇を24時間稼働して暖かい外気を入れ、隣りからの冷気に混ぜて緩和する方法です。異例ですが、この夏試されています。
家の性能(断熱等)と冷暖房のことも10月のパッシブハウスのセミナーで解説します。是非参考にして頂きたいです。
(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)
~2023年木族8月号より~
土地と中古住宅の選び方のセミナーはいつも参加する方が多く、熱心に受講されます。
私も23年前、夫婦2人で9年間住んでいたハイツで下階の人と些細な音の事でトラブルになり、土地と中古住宅を購入・転居することを決めました。まだネット環境がなく、まずはチラシを見て気になった物件があれば不動産屋さんに電話をすることから始め、2~3社の不動産業者に要望を伝えて週末毎に現場を視察しました。紙面だけではどうしてもわからないことがあるので、面倒でも現場視察はとても大切です。
若い新人営業マンは、私のたくさんある要望のひとつ「景色が良いところ」を重視し、池のほとりや、崖の上の物件ばかり。どう見ても地盤が悪そうな場所を案内しがちで、ほとほと疲れました。もう見つからないかな、とあきらめかけていたところ、ベテラン中堅営業マンは、他の「道路と敷地に段差が無い」「道路幅員は広いが幹線でないところ」「ベランダは南向き」、そして夫唯一の要望「ビルトイン車庫でないこと」を兼ね備えた、また私達の予算に合った物件を案内してくれました。
その現場に行くと、小さな平たい丘の上で水はけがよさそう。そして道路を西に進んだところで下り坂になっていて夕日が綺麗に見える様が目に浮かび、そこに住むことが想像できたのが大きなポイントでした。
今もそこに住んでいて、引っ越ししてからすぐに子宝にも恵まれ、とてもご縁がある土地だったと思います。
土地、中古住宅を探すのもエネルギーが要りますが、要望の優先順位をきちんと決めて伝えてないと振り回される事になります。ご縁のものなのであせらずに、そこに住む事が想像出来る土地や中古住宅に巡り合うまで「気長に待つ」のも必要かと思います。あきらめないで頑張ってください。
(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)
~2023年木族6月号より~
設計の仕事を始めた時に、OMソーラーの産みの親である建築家・奥村昭雄さんの「見えないものを設計する」という言葉に心を打たれました。それ以来30年近くなりますが、時代の移り変わりで住宅に求められる性能も様変わりしています。最近は国も断熱性能を世界レベルに近づけるように推奨しています。
私の断熱に対する考えはその土地の気候に合った方法で、冬の暖房と夏の冷房のエネルギー負担を少なくして快適に過ごせるくらいが良いと思っています。高気密と聞けば息苦しいイメージを持たれる方も多いかと思います。どんなに断熱性能を高めても、気密性(空気がもれない)がないと効果は出ないのは事実です。
しかし、生活していれば空気は汚れていきますし、湿度調整も必要です。湿度調整は、杉板無垢材等の湿気を吸放出してくれる素材を使う事が大切です。
外気温が気持ちの良い春や秋、夏の夜は窓を開けて換気したいところですが、最近は花粉や外気の汚れで窓を開けられない場合もあります。計画的な機械換気も大切で、できるだけ自然に近くと思っていても歯がゆいところです。
もうひとつ、とても大切な要素が、太陽の陽射しの設計です。高断熱の住宅へ、夏場の陽射しが入ってしまうと、室温が上がってしまい、熱気がなかなか抜けません。かといって、冬場の陽射しはたっぷりと入ってほしいです。陽射しの調整を上手にしないと高断熱も仇になります。
このような要素全てを兼ね備えた住宅をパッシブハウスと呼びます。今では計算しながら計画出来るソフトが出ていて、遅ればせながら、その導入の検討をしています。勘でしていたことと計算を合わせると、よりよい「見えないものも設計する」住宅になります。
7月か8月にパッシブハウスのセミナーの開催を目指しています。「木族」の次号でご案内出来るように頑張ります!
(2023年木族4月号より)