「きの家、木の家、スギの家」コラムの記事一覧
カーシェアリング=1台の車を複数の会員が利用するシステム
=が各地で試みられているが、一方でバイク=自転車=
シェアリングも注目を集めているようだ。昨年10月に東京で開か
れたイベントでは、ヨーロッパで実施されている無人貸出し自転
車が紹介された。
富山市では、日本で初めて本格的なバイクシェアリングが
始められるとか。利用状況などを検証した上で全国展開を目指
すという。
デンマークのコペンハーゲンでは住民の36%が自転車による
通勤・通学を行っていて、2015年にはこの数値を50%にする計画。
富山市の場合、中心市街地に駐輪場を300メートルおきに
計15カ所設置。150台の自転車を用意する。利用は登録者に
限られ、月500円の定期を購入すれば30分までは何回でも無
料で乗れる。返却は最寄りの駐輪場で可能。自転車や駐輪場
に掲示する広告収入が収益の柱になる。
このシステムで最大の課題は現在主流の「車を中心とした
道づくり」を見直すことだ。また歩行者の安全確保も必要になる。
車も自転車も人も、そして車椅子などを利用するハンディキャッ
パーも安全に通行できる街づくり。実現すればすばらしい。
いつだったか耳にした某国の某市長の「市民が『住みたい』
と思える街づくり」という言葉を思い出した。
(「木族」2010年4月号より)
雪不足に悩まされているバンクーバーオリンピック、何とか
各種目の競技が行われているようだ(一部アクシデントは
あったが)。ただ、記録的な暖冬は間違いない。
中部電力が静岡県御前崎市に建設してきた事業用風力
発電所「御前崎風力発電所」の1期工事が完工し、風車3基が
営業運転を開始したとのこと。
この風車3基が運転を開始したことによって年間約7700㌧の
CO2が削減される見込み。また同発電所の2期工事は今年
11月の運転開始をめざし、風車8基の設置を進めていて、
単純計算で年間CO2削減量は約2万㌧になる。
脱化石燃料をめざし、少しずつではあっても研究や試行が
進んできた。実際の効果、またコスト面など疑問視する面も
多いことだろう。ただ、脱化石燃料への動きは始まったばかり
なのだ。粘り強い人類のこと、太陽光発電、燃料電池、バイオ
エネルギーともども、この先、新しい技術が課題を乗り越える
ことを信じている。
人はこれまで人間のため「だけ」を考えた技術開発によって
環境を破壊してきた。蒸気機関、発電、合成化学もそう。大量
に燃やされた石炭と石油が、今日のCO2増加に影響している
ことは間違いない。これからは人類の培ってきた「技術」で、
地球を守らなければならない。常に訴えているように、ほか
ならぬ人類のために。
(「木族」2010年3月号より)
山口県ではフグをふく(福)という。スルメが飲み屋ではアタリ
(当たり)メと呼ばれる。
第2次世界大戦時、全滅を「玉砕」と呼び変えた。撤退は「後進」。
戦死は「散華」と。
戦争中にこのような言葉を思いついた人間は、多分、鼻が
高かったに違いない。しかし同時に、後ろめたさを感じて
いなければならない。人間として。
ちなみに「散華」とは、仏に供養するために華(花)を散布すること
らしい。仏や菩薩が来迎した際に、讃嘆するために大衆や天部の
神により華を降らしたという故事にちなむ。華の芳香によって
悪い鬼神などを退却させ、道場を清めて仏を迎えるためとか。
当時の軍部は、この言い伝えを利用して自分たちが奪った
命を「華」に例えて罪を逃れようとしたのだ。国民を「だます」ために。
特に腹立たしいのは、将官級の軍人が死亡した場合は、
それがどんな形でもこう呼ぶことがあったという事実。笑うしかない。
キリスト・イスラム・ユダヤもそうだが、宗教を利用する為政者を
信じることができない。理由は一つ。「一方的」なのだ。他の意見を
何一つ受け入れることはしない。「目には目を」と思えばそれしか
ない。
理性に沿って生きたいものだ。世界中が早く「気づく」ことを
希望する。地球は、世界は、人類は、何を本当に望んでいるのか、
何が本当に必要なのか。
(「木族」2010年2月号より)
世界はまだ具体的に動こうとはしなかった。
「2020年に温室効果ガスの排出量を1990年比
25%削減」とした日本も、具体策はほとんど示されていない。
主に発展途上国の反発から2013年以降の枠組みは
先送りとなった。
常に意識したいのは「人は自分自身を最も大切に思うもの
だが、自分『だけ』が大事なのではない」ということ。国々の
思惑をよそに、環境悪化は粛々として進んでいく。
「たとえ明日、世界が滅ぶとしても、私は今日も木を植える」は、
かつてインタビューさせていただいたた女性の言葉。そう。
世界中をまとめるようなイニシアティブはとれなくてもかまわない。
着実に二酸化炭素削減を実行しよう。二酸化炭素を大幅に
減らしてなお、経済を安定させているという事実を認めさせるしか
ないのだ。何もしていないで、数値やカネだけで世界をリードする
ことはできまい。
地球は間違いなく温暖化している。石油はいつか固渇する。
一方で人は自然を利用するしか生きる道はない。進む方向は
明らかだ。また発光ダイオード、ハイブリッド車、バイオ燃料、
太陽光発電、もちろん「国産材の活用」と、アイテムはそろっている。
これを産業に結びつける強い意志が必要だ。
選挙のことだけを考える黒幕や経済団体におもねることはない。
首相には「何よりも環境」と本気で認識して欲しい。
(「木族」2010年1月号より)
今になって思い出した。種から育てる苗は「実生=みしょう」という。
京都府の北部に「山国=やまぐに」という地域があって、かなり以前、インタビューに訪れた。林業家の名前は草木(くさぎ)さん。土地もそうだし、お名前も自然そのもの。草木さんは「実生」苗にこだわっていて、そのための「母樹=ぼじゅ」を大切に守っておられる。
訪れたとき、山奥にある母樹までは行けなかったが、「台杉」の元となった「株杉」を見せてもらった。
もともと、切り株から育っている杉を見て、磨き丸太を効率よく採材するため取られた林業の一種。今は庭園木として知られている。一つの株から数本の杉が伸びているもの。その庭園木の元の株を直径1~2メートルにしたものを想像してもらえれば「株杉」となる。「株杉」のもっと大きなものを「櫓=やぐら=杉」という。
「株杉」に育つ木は「桁丸太」「磨き丸太」となる。「台杉」に育つ木は?
木造住宅に使われる垂木(建物の軒の出を支える部材)は普通、角材だが、料亭などでは雅趣をおぼえさせるために丸太を使う場合もある。この丸い垂木を採材する一つの方法が台杉だ。
俗に言う「北山杉」は、名前のとおり元々は「北山」地方の産。ここもインタビューに訪れたが、山の中で、満足に農産物が取れない。で、育った木を磨いて床柱の材料として供給した。昔は広い道も車もないので、人がかついで(もちろん1本ずつ)都=京都まで運んだそうだ。
(つづく)