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国産材コラム

ビックイシュー

朴訥の論

 会員さんから11月号に速水林業さんが紹介されていると、雑誌「ビックイシュー」が送られてきた。ビッグイシューは、ホームレスの仕事をつくり自立を応援することを目的に、1991年にロンドンで創設された。
 3日前に、淀屋橋の橋詰めで本を手に無言で佇む人がいた。気になりながらやり過ごしたがあれがそうかと思い起こした。彼達は140円の雑誌を300円で販売し、残りを収入としている。
 販売システムもユニークで、ネットでも店頭販売でもなく、ひたすら手売りであること。販売者に行動規範が設けられ、IDカードを提示し、指定された場所で販売することが約束されている。
 雑誌の存在は聞いてはいたが、充実した内容に興味をそそられると同時に、その行動に敬意を表したい。
 先日、千里ニュータウンでマンションの建替えに反対する1世帯に、部屋の明け渡しを求めた裁判が認められ、大阪地裁が強制執行したと新聞に載っていた。
 このマンションは39年前に建てられたもので、02年の法改正で築30年以上のマンションに対し、それまでは建替えに対し、所有者の5分の4の賛成と、修繕、維持費に多大の費用を要するときという条件が課せられていたが、5分の4の賛成のみで建替えられるようになった。法改正より初めての強制撤去ということだ。
 建て替えを求めた人も先行きを判断しての決断であろう。生活条件の違う人が足並みを揃えて物事を行うのは至難の技であり、集合住宅の一番大きな課題である。
 「亡くなった夫や家族と30年暮らし、まだ使えるものを壊すなんて」に、経済的理由のみならず家族の歴史までも壊されるような落胆が伺える。老後の安心を得るためマンションを購入し、漸くローンを完済したところで、賃貸住宅を探さないといけないようでは、どこに安心を求めればいいのだろうか。高齢者に賃貸の入り口は狭い。新しく建設されるマンションに単身高齢者向けのスペースは確保されているだろうか。
 08年の犯罪白書で高齢者の犯罪が20年前の5倍になったとある。「泊まる所が無くて警察の世話になりたかった」と社会的孤立に因する犯罪が多いという。
 初冬に向かい一気に気温が下がった。今年の冬は暖冬であれと願わずにいられない。

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