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国産材コラム

人生を謳歌する暮らしへ

朴訥の論

先日、建築現場からの帰りに女性専用車両に乗った。座席が全部埋まる程度の混み具合だったが、発車間際に杖をつき80代半ばと思しき男性が乗ってこられた。一瞬、ここは女性専用車両よ、という空気が漂い誰も席を立つ気配がない。見兼ねた人が「誰か席を譲ってあげたら」に、初めて腰を上げる人がいた。弱者に配慮もできない専用車両に果たしてその必要性があるだろうか。時代は目まぐるしく変化するが、せめて人としてのやさしさは失って欲しくないものだ。

 

住まいもここ20年で大きく様変わりした。協会がかかわった住まいもリフォーム要請が多い。

 

当初ユニットバスは薄っぺらに感じられ、在来の浴室にこだわったものだが、今では加齢を考慮し、暖かく手入れが楽なユニットバスに切り替える人が多い。家族の憧れでもあった掘りごたつは、歳と共に膝への負担が大きく使い辛い。一時期、流行った出窓もプチ物置化し、結露とカビの温床になりかねず、無用の長物と化す。

 

一方、騒がれたシックハウスはどうだろうか、ホルムアルデヒドの攻略のみで沈静したかのようだが、決して無くなった訳でなく、今持って苦しむ人は多い。

 

 

先日、化学物質過敏症の方(60歳代)を建築士事務所民家で建てたお宅にご案内した。新築するに当たり、基本的に使う建築素材に問題がないか体感チェックしてもらったが、違和感なく安心された様子だった。

 

ただ、アルミサッシに関しては断熱性能が上がったもののペアガラスの重量負担が大きく、体力の衰え始めた高齢者には苦痛に感じる。窓も多様化しているが、少しでも軽く開け閉めしやすい開発を望みたい。

 

国土交通省はエコポイントに続き「住宅ストック循環支援事業」として建替・リフォームに補助金を出すとしているが、いずれも耐震改修が絶対条件で、ハードルが高く結果的に一番手を差し伸べたいところにはなかなか届かないようだ。

 

家族変化に合わせて、吹き抜けやロフトを利用し、書斎や趣味の部屋を造るなど暮らしを豊かにするリフォームもある。2年前にマンションリフォームをされた方から、クライミングウォール設置の相談があった。開放的になった部屋で棚や押入れに登るのが好きな子どもに、いっそボルダリングをということだった。

 

暮らしに夢を与え、人生を謳歌するようなリフォームは、関わった人まで幸せにさせてくれるようだ。

 

(「木族」2016年12月号より)

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