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国産材コラム

こころに残る音楽葬

朴訥の論

ご会葬の礼状には「愛情豊かに育ててくれてありがとう」とあった。

 

『母の心にあったのは「自分にできることは何でもしたい」という優しい気持ちでした。中学の音楽教師をしながら特別支援学校教諭の免許を取得したのも、そんな人柄のなせるわざだったのでしょう。「自然豊かで平和な世の中でありますように」と年賀状にしたためていた母は、本当に心優しくて立派な人だったと改めて尊敬の念を募らせております。(中略)

芸術への造詣も非常に深く、私にピアノを習わせてくれたり、自信も歌やピアノを学んだりと、心豊かな暮らしを送っておりました。こうして在りし日を偲ぶ程に、どんなに沢山の愛情を注いでくれていたのかが改めて身にしみて、感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。受けた恩を返せなかったことは悔やまれますが、次の世代へ繋いでいくことで報いていきたいと思っています。』~娘より

 

 

昨年末にリフォームをされた方のお母様が、今年2月に亡くなられ、お別れ会に参列した時のことだ。故人の一生が綴られたアルバムは、まるで俯瞰するように早回しに時が流れ、生きた証しを辿る。音楽を愛した母(故)へ、シンガーソングライターの道を生きる娘さんが「ダニーボーイ」(アイルランド民謡に詩をつけ、ピアノを弾き語る。澄んだ声が過ぎた日を慈しむように静かに流れた。

 

<あなたのいないこのへやは、あまりにもさみしすぎる。いろんな思い出がここにたくさんつまっている。いつまでも忘れないで大切にしまいましょう。また会えるその時まで。また笑いあえるそのときまで>

 

母への惜別を切々と歌うその詩に、深い感動を覚えた。

 

マンションリフォームという短期間の中で、ほんの僅かな出会いではあったが、多忙な娘さんに代り、リフォーム時にも何かと心を砕いておられ、物静かな語り口調が思い出されて胸が熱くなった。

 

良しにつけ悪しきにつけ想い出の折々に蘇るのは、その時々を暮らした家ではないだろうか。改めて家がその人生の関りの中でどれほど大きな意味をもつのか教えられた気がした。

 

「次の世代へ繋いでいくことで報いていきたい」は、亡き人に贈る最高の言葉だろう。最後は「ふるさと」の合唱で締めくくられた。

 

-こころざしを果たして

いつの日にか帰らん

山は青きふるさと

水は清きふるさと-

 

(「木族」2016年10月号より)

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