前回は「密植」で話を終わった。密植といえば奈良・吉野が代表とされている。
密植の理由は
①年輪を細かくする=普通に育った木の年輪を見ると、中心に近い年輪の幅が広いことに気づくでしょう。これはつまり、すくすくと育った証拠だが、木材市場に椪(ハエ)積みされたとき、年輪の詰まった木が高く売れるため、生育を抑えるためもあって密植する(ただし売れる寸法になるまで年数が余計に必要)。
②真円にする=普通に育った木の年輪は、日の当たる側(南側)の幅が広くなる。これは切り株で方角を知る方法として知られているが、これも木材市場に椪(ハエ)積みされたとき、円に近い年輪の木が高く売れる。
③だが、もう一つ、曲がった材を間引くことによって、まっすぐな良材だけを育てる=将来的に持ち山を「美林」とする=のも大きな目的だったろう。
さて、密に植えると、当然のことながら、それだけ除間伐も要求される。昔は間伐した細い丸太は足場に、杭に、少し前までは電柱、梱包材にも使われて、その費用がまかなわれたが、今は金属やコンクリート、プラスチックにそのシェアを奪われた。
そのせいもあって、最近は植林される山自体がほとんどないとも聞く。前回書かせてもらったように大変な作業にもかかわらず、40年、50年後にいくらで売れるのか「不安」が大きすぎる。そこで、間伐で材を出しながら、長伐期(太い木を育てる)をめざすところが多い。
協会は以前、大阪・南港のATC(アジア・太平洋トレードセンター)の1室を情報発信のため借りていたことがあって、そこに掲示した文章で「もし、あなたが山を持っていて、そこで育ててきた木が売れないとすれば、どうされるでしょうか」と問いかけをさせていただいた。
木を植えて⇒下草を刈って⇒間伐をし⇒ツル(木を枯らせるものもいる)と闘い、数十年経ってみると「伐って運んで売って収益ゼロ」という林業家も少なくないのだ。植える気にならないのも理解できよう。