セミナー・見学会

TOP > 国産材コラム > 山の仕事って…⑤

国産材コラム

山の仕事って…⑤

その他

いま少し、北山杉の話をさせていただく。

 

 垂木(タルキ)や床柱にしろ、さらに太いケタ丸太(和風住宅のケタに使う)にしろ、角材に挽かず、丸太のまま使用する。丸太のまま商品となる。とすると、丸太の表面に傷があっては価値が低下する。

 よって、育てているときも風などで立ち木同士が擦れ合ってはならないし、雪で曲がってひびが入ってもだめ(真夜中に雪下ろしに山へ入ることもある)。特に伐採時、隣り合う立ち木に当てないように、また倒れたときも傷がつかないようにしたい。つまり非常に手間がかかる。

 ヘリコプターで吊りながら伐採し、ふもとへ運べば傷はつかない。ただ、莫大な費用がかかるから高価な材でないと採算が合わない。で、倒そうとする場所に布団のような柔かなものを敷いて、その上に倒す。これは言うはやすし、行うは難し。

 

 以前、奈良県の山で普通の立ち木の伐採を体験させてもらった。

 まず、倒す方向を決める。その方向は必ず斜面の上方⇒転がり落ちる危険性を回避するため。その方向の根元に、クサビのような形の切れ目を入れる。その後、反対側からチェンソーで切り込んでいく。

 おっとその前に、倒れる方向を定めるため立ち木にロープをかける。ロープをかける場所はなるべく立ち木の上のほうに。書けたロープを擦り上げるようにするのだが、これが一筋縄(シャレじゃなく)じゃない。そしてチェンソーの刃が伐り進むと、ロープを(木を)倒す方向へ引っ張る。当然のことながら、立ち木は引っ張るほうへ倒れてくる。ひえ~! 下手すると下敷きだ。必死で逃げるところを写された写真がある。

 

 そんなこんなで苦労するが、それでも枝が擦れて、周囲の立ち木を傷めるし、方向も少し変わったりする。

 

 林業は、単に倒すだけの作業にも技術が要求されるということ。植える・育てる、樹種を決める、間伐も含め伐採する木を選ぶのも簡単ではない。

 

『遠くから眺めるのと、実際に登ってみるのとでは、山はまったくちがう顔を見せる。傾斜がものすごくて、足もと以外へ視線を移す余裕がない。ほとんど崖に近いぐらいの急斜面もあって、そんなところにまで植林したやつは、ほんとに命知らずだと思う。植えるだけじゃなく、手入れして、育ったら切って運び下ろすんだよ? 人間がまっすぐ立つのも難しい斜面なのに、信じられねえ。』(三浦しおん著・神去なあなあ日常から)

                                                    つづく

(C) 2017 NPO法人国産材住宅推進協会 All Rights Reserved.