ブレない住まいづくりめざし
もうすぐ梅雨入りですね。杉や桧の無垢材フローリングを素足でサラリと気持ちよく感じていただける時期になりました。
さて、ゴールデンウイークに催された「削ろう会」の出店スタッフとして参加した時に、木のことが大好きという建築科の大学生さんとお話しました。木の扱い方の話をすると目を輝かせて、とても新鮮でした。
その目を見て、ふと思い出したのが、私がかけ出しの頃、新築設計したお施主様と久しぶりにお会いした時、「設計の時にこんなお話されていましたね」と懐かしそうに言われたことです。あれもしたい、これもしたいと設計者としての夢を語っていたようで、そんな話をしたことさえ忘れていた私は、若かりし自分の言葉に赤くなりました。
今も大きな夢は忘れてはいませんが、実務を重ねていくうちにわかってきたことは、あくまでもお施主様の住まいであり、暮らすのは設計者でないということです。とても当たり前のことですが肝心なところです。
設計者のあれもしたいこれもしたいより、本当に暮らしやすいのか?お施主様の思いは果たして全体的なバランスがとれたものなのか?これが設計者として一番大切にしているところです。
住まいづくりには、たくさん実現させたい思いがあっても、全てを叶えることは困難。一方を立てれば、もう一方が立たずということも多く、どちらを優先するかはご本人でしかわかりません。
上手に設計者に思いを伝える方法として、ご家族で話しあって住まいづくりのテーマを決められることをお薦めします。住まいづくりの軸となり、思いがブレなくなります。設計者はその思いのサポーターです。
(「木族」2015年6月号より)