セミナー・見学会

TOP > 国産材コラム > 山の仕事って…6

国産材コラム

山の仕事って…6

その他

 今回は北山杉を少し離れて…。

林業が窮地に陥るということは、これまで書いてきた「技術」も廃れるということ。住宅建築が「住宅産業」となり、結果、本物の大工さんが減った。いや、それよりも伝統産業の跡継ぎのことを考えれば想像してもらえると思う。つまり、仕事が減れば人がいなくなり、最後には「技」が伝わらなくなる。

前回、ヘリコプターでの搬出について少し書かせてもらったが、伐採すれば、それを道路まで運び出さなければお金(仕事)にならない。間伐という言葉を普段、私も簡単に使うが、間伐した材は、皆伐=一定面積の立ち木をすべて伐る=に比べ、必要な(売れる)長さに切ったあと(玉切りという)、木と木の間を、他の立ち木を傷つけないように運ぶという余計な手間が必要になる。

「神去なあなあ日常」(三浦しをん著)にも出てくるように、木曾の御柱祭りよろしく、立ち木をそのまますべり落とすのはとても難しく危険だ。そうでなくても人が手で下ろすこと自体、非常に時間がかかる。そこでどうするか。

道まで近いときはブレーキのついた木馬=きんま=というソリに乗せて細い林道を使い(今は=熱意のある山主の場合=林道が発達して使わなくなったろうが)、遠い場合は鋼のロープを伐採地=あるいは玉切り場所=から麓まで掛けて(架線という)下ろしてくる。木馬は坂の勾配に注意しないと操作ができないケースも出てくる。見たことはないが想像するに、あまり体験したくはない。架線は架線で、どこをどう通すか、またロープを保持する土台の構築など、難しい技術が要求される。

 

このように搬出についても技術者が林業を離れ、あるいは歳をとって、減っているのだ。植林・育林も同じことが言える。この先、我々の想いが通じて「国産材時代」が来たとして、植林から伐採・搬出がせっかく増えた需要に間に合うかどうか、とても心配だ。

資源として使うべく育てた森が荒れるのは、技術の伝承の面からも無視できない。育林について「まあ、少しぐらい間伐が遅れても、山は待ってくれる」と語る林業家もいたが、それにも限度があろう。いつ、人は気づくのだろうか。

                               つづく

(C) 2017 NPO法人国産材住宅推進協会 All Rights Reserved.