まだ40歳代のころ、インタビューに訪れた山主が70~80歳。案内される後姿がどんどん離れていく。「鍛え方が違う」だけと思っていた。別の林業家の話。「山で仕事をするには、足首の関節が柔らかくないとだめ。つまり爪先が反り返りやすくないと、山歩きを楽しむにはいいが、仕事にならない」とのこと。なあるほど。
今は車がよくなると同時に林道が通って、車で人間や道具を運びあげることができるが、昔は全部手で上げた。当然、1回の山仕事が1日で終わることは少ない。で、道具を置いておくと同時に寝泊りする山小屋が必要になる。自然に、現地で調達する食料が出てくる。
だから山で仕事をする人は山菜やキノコに詳しい。林業家は自然環境についての知識が豊富だ。水や空気についても普段から肌で感じているから、話す言葉には説得力がある。数人の林業家の講演を聴いたことがあるが、すべて面白く、うなづける内容だった。
インタビューも、だから最も楽しみな仕事だった。いくら書いても書ききれないほど大変な仕事、しかし、ひょっとして楽しいのかもしれない。(つづく)