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国産材コラム

20年経っても杉の温もりは変わりません

朴訥の論

協会を立ち上げて34年を迎えるが、それを感じるのは1年1度の年賀状によるところが大きい。当時の赤ちゃんが大学生になっていたり、「お母さんが介護施設に入りました」や、小学生だった娘さんが「お嫁に行きました」など、ご家族の暮らしの変化が手に取るように分かり懐かしさと同時にそれぞれの住まいづくりが思い出され、34年という年月の重みを感じる。

 

「20年経っても杉のぬくもりは変わりません」「息子の友達がこの家は呼吸しやすいと言ってくれます」など、お住まいへの心情なども伝わり、この仕事に関われたことを幸せに思う。

 

先日、友人のお孫さんの出産祝いに、国産の木のおもちゃをと考えあれこれ探したが、数が少なく、あっても手ごろな価格では見当たらず断念したことがあった。

 

テレビで東京おもちゃ美術館長の多田千尋さんの話を聞いたが、日本にある木のおもちゃの殆どが外国製品で国産の木のおもちゃは5%程度に過ぎないと言う。見つからない筈だ。

 

その東京おもちゃ美術館が「赤ちゃん木育ひろば」を設け、サークルに2万個の杉玉を入れて触れさせるなど、様々な木のおもちゃを通して赤ちゃん親子の豊かなコミュニケーションを支援している。

 

ひろばを造る際に木材や建築関係者に赤ちゃんに適している木材を訊ねたところ口を揃えてスギを推したという。何故いいのかは数字に表せていないが、スギになる前と比べ画期的に変化したことは、まず赤ちゃんが泣かない。親子で一緒に木と遊ぶ姿があり、施設に来てもすぐ帰っていたパパの滞在期間が長くなったこと、今まで頻繁にしていた携帯電話を、ママがしなくなった等が目立つという。居住性が良くなったというより、具体的で分かり易く、生きた表現に説得力がある。

 

日本はフィンランド、スウェーデンに次いで第3位の森林保有国であるにもかかわらず、国産材が普及していないことを憂い、初めの一歩はおもちゃからと「ウッドスタート」を提唱されている。地方で出す出産祝いなどに地域材で創られた玩具を贈ることも推奨している。

 

いま地域のゆるキャラ人気だが、各地で地域材を活かした特色のあるおもちゃや遊具を開発してほしい。20年経っても変わらぬ温もりを持ち続ける杉であれば、その赤ちゃんが成人しても、その温もりに帰る。

 

人は五感で覚えたことを簡単には忘れない。まだまだ国産材へと繋がる道はある。

 

(「木族」2016年2月号より)

 

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