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国産材コラム

ー多士済々ー

朴訥の論

3年ごとに建築士に義務付けられている定期講習会に行った。

 

既に席は決まっており、200人ほどの席は埋め尽くされていた。最後尾から眺めるに、何と白髪と薄くなった頭髪の多いことか、建築業界もご多分に漏れず高齢化が進んでいる。

 

 

18年前に定年後の暮らしを考え新築された方が、20年を前にし、気になる屋根や外壁の点検を依頼された。構造に問題はなく、外壁と屋根の一部補修で事なきを得たが、コウモリが壁の中にいることが分かり、夕方コウモリが飛び立つのを待ち、入ったと思われる隙間を金網で塞いだ。

 

神戸のベッドタウンとして開発された街もすっかり落ち着き、大きく育った街路樹にコウモリが繁殖したようだ。街がひっそりすると小動物が幅をきかす、最近ではあちこちでイタチやアライグマの苦情を耳にする。

 

工事が終わりご挨拶を兼ね訪問した折り、数日前にご長男家族と相談した結果、ご両親との同居を承諾されたようだ。ついては増築の検討をして欲しいという嬉しいご依頼を受けた。

 

建築に携わり、世代を越え住み継がれていく場面に何度も出会っているが、家族のみならず住まいにとってどれほど幸せで誇らしいことだろう。新築された時のご両親の努力や住いに掛けた想いを知っているだけに尚更感慨深い。

 

「打ち合わせの時、一字一句洩らすまいと書き込んだノートは、今もちゃんと保管してます」ご主人の顔が一瞬輝いて見えた。

 

親から子へ子から孫へと受け継がれる住まい。これからも多くのドラマが生まれることだろう。願わくばその場面場面に邪魔にならない程度に寄り添っていたい。

 

 

神戸で行われた「第31回削ろう会」に、建築士事務所民家が出展参加した。連休でもあり来場者は2万人を越え活気あるイベントとなった。削ろう会はカンナの薄削りを競い合う会である。腕に覚えのある大工さんが全国から500人程集う。

 

3メートルのヒノキ材を削り、3か所の厚みをゲージで計り、合計何ミクロンかを競う。予選を勝ち抜き7、8名がステージで最後の技を競う。その中に大工歴2か月という若者がいた。惜しくも最終には残れなかったが、その勇気に一段と大きな拍手が沸いた。

 

「この技術が発揮できる仕事が欲しいです」は、3位入賞を果たした大工さんの言葉だが、会場を埋める総ての職人の叫びに聞こえた。

若い大工が棟梁になる頃、果たしてお施主さんとハートで繋がる仕事が残されているだろうか。

 

(「木族」2015年6月号より)

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