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(山林 2002.12掲載分) 山林ツアーと節論議・前編
生活者に理解を求めるには現実を見ていただくのが一番との考えから、
山林視察を年に一、二度行なっている。
宮崎県耳川流域、日南町、大阪では千早赤坂村や河内長野、奈良県榛原
町、下北山村、京都は福知山、京北町、兵庫県山崎町、鳥取県智頭町
などである。
とりわけ平成13年7月に行なった智頭町の山林視察は意義のあるもの
となった。 「ぜひ見て欲しい」に動かされ、その林家を訪ねた。
裏山に降った雨が土砂を削り取り、鉄砲水は麓の林家を襲い、戸口まで
土砂に埋まった。
戦後の拡大造林により村をあげての植林は山麓の休耕田にも杉や桧
が挙って植えられた。地域の住民が一定の山林、原野に入り共同で植林
し利益を得るという入会権の山も多い。案内された山林も入会林野で、
戦後は段々畑であったらしい。僅かに畦の面影を残す林内は薄暗く、
陽の射さない山肌には下草が全く生えていない。
緑の無い生活になれていても山にいて緑が視界に入らないという
異様さは体験が無い。直径27㎝程度の杉が寒々しい表情を呈している。
林道らしきものはあるが、それと平行して1段低い通りに、一夜の雨で
抉り取られたという幅1~2mの亀裂が200mも続き、樹木をなぎ倒し
山肌を割る。
早急に伐倒、地ごしらえをし植林を考えているということであったが、
1カ月待っていただき、一般の生活者に見ていただくことになった。
新聞に取り上げていただいたこともあり、関西の参加者は70名、近県からの
参加者も30名に膨れ上がった。
参加者の女性が県知事にメールを送ったことから、県の林務関係者や大学
の林学関係者などで現地の参加者も80名になり、総勢180名の大視察団と
なった。 悲惨な山ばかりと解釈されても困るとの考えもあり、急遽、桧や
杉の樹齢80~100年の美林もツアーに加えられた。
美林は複層林で構成され、地表は青々としたシダ類や灌木で覆われて
いた。手入れの行き届いた山と手入れのされていない山との対比が明確
で、説得力のあるツアーとなった。