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国産材コラム

職人さんの技術レベル

朴訥の論

震災復興とオリンピックで深刻な職人不足と聞く。大工さんの就業率が05年から10年の5年間で、53万9868人から39万7400人と38%も減少している。このままの減少率が進めば、20年に新築着工数80万戸が維持できたとして、大工需要30万人に対し、9万人が不足する計算になる(新建ハウジング)。

 

なぜ大工職人が増えないかは、若い大工を育てにくい時代背景にあると以前にも書いたことがある。棟梁に安定した受注があり、生活のゆとりがなければ人など育てられる筈もない。

 

現在、世帯数1595万世帯に対して700万棟の家が余っている状態にあり、これだけ新築工数の伸び悩みが続けば大工職として先に望みを繋げる状態にはならない。

 

よく大工職の手間賃が仲間内で話題に上がる。大工さんの工賃はその地域の標準価格で高い安いが判断される。

しかし、その技術レベルへの評価はあまりされない。大工さんといってもその技術レベルはまちまちであり、階段の墨付けや真壁の収まり、和室の造作など出来ない大工も多い。

また技術レベルを上げたところで現在の技能評価のあいまいさを考えれば、若者に魅力的な職種とはならない。

 

確かに家を建てる人からすれば、工事費は安いに越したことはないが、それでは益々、職人の手間を省き接着剤に依存した早かろう遅かろうの家が横行する。

 

大工の技能評価基準を決めようとする動きがあるようだ。見習い大工をレベル1とし、一般的な大壁造で、プレカット材を使い上棟から仕上げまでをこなす大工、木拾いから構造材の墨付けや手刻みが出来る大工、木造住宅の技能を指導でき、真壁造、太鼓梁、入母屋の墨付け手刻みが出来、且つ和室の造作が出来る大工、の4段階にレベル付けしている。

その技術レベルに応じた工賃を決めることで、若者に夢の持てる職業に近づく。

 

大工職に限らず、左官・板金・塗装業なども同じである。技術のあるなしは経年変化にその差が大きく現れる。

現場で塗装屋さんに教わった。誰が塗っても大して変わらないように見えて、色がつけば良いという感覚で塗れば、必ず色むらが出る。ポーチ柱も4面一緒に上から流し塗りするのでなく、一面ずつ丁寧に塗らないときれいな仕上がりにならないと聞いた。

 

何事も極めるに奥が深い。職人さんを育てるに一番不可欠なものはそれを理解する生活者の存在にある。その時間と技と誇りに、どこまでの納得を示すかにかかっている。

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