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国産材コラム

産直住宅始まる・前編 《山林》

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(山林 2002.7掲載分) 産直住宅始まる

 産直住宅を始めて18年になる。現在は宮崎県を主に三重県、兵庫県など

から木材を仕入れているが「なぜ宮崎か」といった質問をよく受ける。

最初から宮崎県と取引があったわけでなく、大阪の商社が宮崎県の台形

集成材を売り込みに来たことから始まった。

日向市の集成材工場や木材市場などを訪ねるうちに、産直も出来ると

いう確信をもったが、最初からスムーズに行ったわけではない。

 宮崎産直の1棟目は1987年に千里中央駅で行われた記念イベント

(千里ニュータウン開発25周年)に、オール杉材で木造2階建ての骨組み

を展示したのが最初である。

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お施主さんの了解を得、現実の上棟を行なう前に、1週間展示させて

もらった。ヒノキ信仰の強い関西にあって、杉の構造材がどう受けるか

一抹の不安はあったが、殆どの人にその区別がつかず、全て杉だと

教えても驚きは感じられなかった。関西では梁材に杉を使うなど考える

人は少なく、殆どが米松使用であり、結果的に不安を示したのは何の

ことはない建築屋と設計屋であった。

 上棟式を日向流で行い、五色の吹流しが風に舞う中、ハッピ姿の大工

達の餅撒きに歓声があがった。

 当時、大阪の大工工賃が1日25,000円位の時に宮崎では1万円と低い

ことに着目し、アゴ足つきで宮崎の大工が泊り込み大工工事完了までを

行うといった形態をとった。2年間で注文住宅を25棟ほどこなし、宿舎も

効率を考えて大阪、奈良、神戸と増やした。

 しかし、どこで生活するにしろ寝具と全ての家電製品を要し、何棟こな

しても経費においつかず、当初の思惑は見事に外れた。

 当然のことながら関西と日向では生活スタイルも市民感情も微妙に違う。

地方で許されても、神戸で隣家の敷地に入り庭先にある水道で手を洗お

うものなら犯罪者扱いである。

 夜の11時にマンションの窓を開放したまま、祝宴を開いているという

クレームが入ったり、10坪程度の平屋の解体を任せば消防署員に呼び

出され、駆けつけてみると解体した残材を現場で燃やす、という都会で

は死語に近い「野焼き」をしていたのである。

 何度注意を促せど建築現場の軒裏に大工のモモヒキがはためいて

いたりと、悪気がないだけに余計頭が痛かった。

大阪に慣れるにつけ遊ぶことも覚え、トラブル発生を懸念したことと、

経費超過で大工を地方から呼ぶことを断念した。

後日、離婚にまで発展した大工がいたと聞かされ落ち込んでしまった。

 

つづく

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