TOP > 国産材コラム > 残そう伝統技術「長ほぞ込み栓」
巨大地震が危惧される中「私の家は大丈夫でしょうか?耐震等級3以上あるのでしょうか?」と大阪府で5年前に新築したお施主様からお問合せがありました。
日進月歩の建築業界、建築時期により性能に対する考え方も変わっています。今の民家の新築では許容応力度計算した耐震等級3(建築基準法の1.5倍の強さ・最高位)は標準仕様となりましたが、ちょうど5年前は構造計算ソフト採用の過渡期で、その方の家は手計算の構造計算で、確認をすると耐震等級2(建築基準法の1.25倍の強さ)ぐらいでした。テレビなどで耐震等級3以上ないと大きな被害を受けると煽られているようですが、民家の住まいづくりでは、耐震等級3でないからといって不安になることはありません。
民家(国産材住宅推進協会)の住まいづくりの特徴でもある、全ての柱頭柱脚に古くから日本建築に使われた伝統工法=横架材(梁や土台)に細い穴を開けて、長ほぞという突起がある柱の先をそこにはめて硬木(樫や栗の木)の栓を横架材の横から差し込み、横架材と柱を繋ぐ「長ほぞ込み栓」=を開設当初から採用しています。
現に、阪神淡路の震災の時は耐震等級1(建築基準法レベル・最低位)ぐらいの時代でも被害はなく、地震がひどかった東灘区の家も漆喰塗りの壁にヘアクラックが1本入っただけで、棟上げ直後の家を計測すればほとんど狂いがなかったと聞いています。
もちろん「長ほぞ込み栓」が全てではありません。ただ、現在「長ほぞ込み栓」を採用している工務店さんは希少ではありますが、少なくとも構造に有効に働いていることは間違いなさそう。伝統技術の一つとして継承していきたいものです。
(建築士・ライフオーガナイザー=細江由理子)
~2024年木族10月号より~