地元の方々に使っていただくために協会の事務所1階に設置した端材コーナーは、多くの方に利用されており、昨年からは大人の方には地域の保育園に木材をお送りするための募金をお願いしています。そんな折、コーナーの前で悩んでいる少年が。
彼はこちらに気づくと。被っていたキャップを取り深々と頭を下げ、「僕は野球部所属の中学2年なんですが、有料でしょうか、無料でしょうか」と。中学生という微妙な年齢で、募金がいるのか悩んでいた模様。そもそも強制でもないのに、なんて真面目な少年だろうと思いつつ「無料ですよ」とお答えすると、安心した様子で材料選びが始まりました。
聞けば世界に一本だけのオリジナルバットを作りたいのだとか。握り加減や完成イメージを確認しつつ角材1本を選定。「どうやって作るの?」と聞くと「紙やすりで」「そっか、出来上がったら見せてね」「はい、必ず」
今ごろは角が少し丸くなった工程でしょうか。グリップ部分に差し掛かる頃には心が折れそうになるかも知れません。ただ、地道な作業が実を結び、ついに出来上がったバットが初打ちでぽっきり折れようとも、彼の心は折れなかった証となることでしょう。
(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)
~2024年木族4月号より~