◆住まいづくりの方向性とは◆
ここ最近、中古住宅について似たようなご相談を受けました。色々と改修すべきカ所がたくさんあるのは分かっていながら、何からどう手をつけていいかわからず長年放置したままになっている。そもそもリフォームがいいのか、建て替えが良いのか分からず、方向性が見えない、とのこと。
確かに、建て替えもリフォームもそれぞれに一長一短があり、当然答えを出すのは難しいと思います。ただ、答えが出ない、方向性が見えない、ずっと家について悩んでいるという方のパターンとして、そもそも家族の中で一人だけで家のことに悩んでいる場合が多いように思います。
例えば、父親は家に無頓着で「今のままじゃだめなの?」と暮らしに不便があることに気づかず、子どもは「好きにすれば?」と興味を示さない。こういったことが常でしょうか。確かにこれでは、話は進まないし、良かれと思って話を進めた後に家族から不満を言われるのも辛い。
そこで設計として出来ることは、とにかく家族が囲んで話ができるプランや模型、そして価格をできるだけ早い段階から用意して、皆で相談してもらえる材料を作ることだと思っています。
興味を示さなかった家族も、一度リフォームや新築の間取りを見ると、具体的な意見や要望が自然と出てきて、家づくりに興味が湧いてきます。
間取りがあれば、悩むべき問題点もはっきりして、価格が分かれば、取捨選択ができるようになります。話が動き始めるのはそこからで、何もない状態で家族と相談してもそう簡単に「家」についての話は進みません。
そもそもリフォームの相談で、何をどうしてほしいのか、内容のまとまった相談をされる方はほとんどいません。どうしていいかわからない、そのまんまを相談に持ち寄って来てくださればと思います。
(建築士事務所民家・設計部=中津真)
~2023年木族8月号より~