平成も余すところ3ケ月となれば名残惜しくもあるが、振り返れば自然の猛威をして人の弱さと強さを思い知った30年であった。
年号が変わるといえば思い出すことがある。昭和63年の年末に某新聞社へ新年度のイベント案内に伺った折、社会部の記者から昭和天皇が崩御されればこの紹介記事は紙面の都合で載らないと言われ、ひたすら無事を願ったが、記者の言葉通り紹介記事は敢え無くボツとなり、苦い経験として残った。
平成6年には竹中前理事長が亡くなり、悲しみが癒えぬ間に阪神淡路大震災が追い打ちをかけ「まだ事業を続けますか」と問うスタッフを鼓舞し、今日に至っている。
あれから30年、当時と比べれば国産材の品質は比較にならないほど向上しているが、それでも国産材の利用推進を続けるうえで、セミナーや見学会を止められない訳がある。
杉やヒノキの無垢材は余程しっかり生活者にレクチャーをしない限り、新建材と同じ感覚で受け止める方も多く、こんな筈では無かったと言われることもある。
それが証拠にセミナーや見学会に参加され、リフォームや新築をされた方からクレームが出ることは殆ど無いが、セミナーを受けられずに住まいづくりをスタートした方に、節やキズに対して違和感を持つ方が多い。
新建材と違い、木材は1つとして同じものは無く、癖もそれぞれで板材はつくり置きが出来ない。加工して長期間置いておくと反りや割れが生じることもある為、受注してからの生産となり、時間もかかるなど生産者にとれば難しい代物である。
また施工上の問題として床鳴りなどがあるが、木造住宅であれば床面を支える部材(大引き、根太)を調整すれば簡単に補正できるところ、フローリングの床に杉板などを増し張りする場合、些少の床鳴りが生じることがある。
特にマンションに杉板を張る場合、床を全て剥がし、防音処置をしたうえで行うが、予算面と天井高の関係でフローリングの上に直接増し張りをすることがある。マンションのフローリングはコンクリートに直貼りが多く、下にフエルト状のクッション材が敷かれている。その上に板を張れば当然フワフワし、板同士が擦れ床鳴りとなる。生活に支障のない程度であれば寛容に願いたいものだ。
セミナーは1000回をゆうに越えたが、新しい年号に向かい、門を叩く人がいる限り、又、新たなる心構えで挑み続けたい。
(「木族」2019年2月号より)