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国産材コラム

地頭力 その前に

朴訥の論

提出された書類に、想像もつかない誤字を見つけて唖然とすることがある。パソコン世代に間違いを指摘しても、彼らにしてみれば単なる変換ミスに過ぎず、誤字による羞恥心など微塵も感じられない。

日本で義務教育を終えていない人が100万人いるとか。様々な事情はあると思うが、社会的、経済的事情があって受けられなかった人も多い。

先日、ボランティアが支える教室という番組を見た。75歳で読み書き教室に通い、文字が初めてわかったという在日韓国人女性が紹介されていた。
文字が読めないばっかりに電車に乗ってもどこで下車するのかが判らず、教えてもらった駅は真っ赤な嘘、駅構内で明かした一夜の悔しさが今も残る。
文字が理解できた喜びを初めて体験したのは「この先行き止まり」と書かれた立て看板の意味が解ったときだという。行動した後に看板の意味を知る。そんな回り道を何度繰り返されたことか。

彼女は語る「文字は私のメガネです。これだけ楽しい勉強をどうして今の子は嫌うのか判らない」と。
実生活で感動を覚えるほどの成果があれば、学びもまた楽しからずや、と言えるが、勉強と実社会とがなかなか繋がらない。
名だたる大学を出て、難しいとされる国家試験はいとも簡単に取得するが、毎日が応用編の実社会では方程式どおりにことは運ばず、実力を発揮できないまま挫折する人も多い。

先日、地頭力(じあたまりょく)という言葉を教わった。一言で言えば、答えのない問題を解いていく力だそうだ。想像力を働かせて2手3手先を読み判断する能力にもつながり、応用力が養われる。
しかし、想像力の前に体が即、反応するくらいの若さと行動力が欲しい。体を動かし、失敗を重ねるうちに見えてくるものもある。
行動した後に看板の意味が判っても良い。幸いなことに文字を読める能力は既に与えられているのだから。

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