セミナー・見学会

TOP > 国産材コラム > おもしろきこともなき世をおもしろく

国産材コラム

おもしろきこともなき世をおもしろく

朴訥の論

5年ほど前に、シニアご夫婦の家をリノベーションしたことがある。施工期間は3か月を要し、その間、地域で借家を借りて過ごしてもらうことを提案した。近くの不動産屋で対応を促すが、一向に良い返事が返ってこない。原因はご夫妻が揃って70代半ばであることだった。

 

3か月の期間限定で、建築会社が保証するといっても許可が下りず、埒が明かないまま、建築会社が部屋を借り、ひとまず3か月間移住してもらい工事を完成させた。

 

耐震だの、断熱工事だの国は促すが、高齢者の仮住まいすら探すに困難となれば、動きようもない。きけば障害者でさえ同じ対応に泣かされると聞く。

 

今、全国の空き家総数は2013年時点で820万戸も存在し、その内賃貸用は429万戸に達する(総務省)。この空き家を住宅セーフティーネットに、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県に登録するシステムをつくり、登録住宅の改修費用を補助する。国交省は20年度末までに登録数を17万5千戸確保したい考えだ。居住支援法人(NPO)が情報を提供し、家賃債務保証も実施するとしている。

 

その登録が昨年末あたりから各地方自治体で始まっている。出来ることなら化学物質に悩む人たちにも対応できる住宅であればなおありがたい。年月を経過した中古住宅であれば、化学物質もある程度は抜けているというもの。改修時に可能な施工配慮で補えるのであれば、それに越したことはないが、その改修がビニールクロスとフローリングのオンパレードであればなにをか云わんやだ。

 

 

要配慮者といっても一言で語れない程様々な形があり、線引きするのも難しいが、適切な判断を望みたいものだ。

 

東海道五十三次の最後の宿場町として賑わった滋賀県大津市では今も2000棟の町屋が残存するが、その10%が空き家だそうだ。大津駅周辺でもシャッター商店街が目立つ。その地域に点在する町家を再生し「宿場町構想」と位置付け、ホテル「HOTEL講(こう)大津百町」をオープンさせる。それを突破口に地域ぐるみの町おこしがスタートするようだ。

 

リーダーシップをとるのは木造戸建て住宅を通して日本建築の技を継承させたいと願う地域の工務店さんである。久々に胸躍る話に出会えた気がした。

 

「おもしろきこともなき世をおもしろく、すみなすものは心なりけり」高杉晋作の言葉が重なった。

 

(「木族」2018年6月号より)

Copyright(C)NPO法人 国産材住宅推進協会 All Rights Reserved.