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国産材コラム

水資源を守れ

朴訥の論

都会から農家に嫁いだ女性に聞いたことがある。「当初は生活が苦しくなれば畑を売れば良い、程度に考えていたが、とんでもない、そんなことをすれば親戚縁者を問わず地域住民からどれほどの誹謗中傷を浴びることか、その土地に居られなくなる、農家とはそうゆうものです」子供を授かり年々その地に根を下ろす様子に今、日本の母を見る。

昨年の半ばに中国人が日本の山の買収を始めたという風評を聞いた。高度成長に伴い木材が必要なのかと思ったが、国土が金力に支配されるようで、嫌悪感を抱いた。

5月13日の産経新聞(朝刊)によれば、三重、長野、岡山などに買収話が持ち込まれたが、いずれも慎重な対応を取ったため、売買契約は成立していないという。
買収話のあった三重の水源地に近い森林は原生林を伐採した後の二次林で良材でもなく、急斜面に位置し木材の搬出にも多額の費用を要することを考えれば、木材そのものよりも水源地として林地を求めていると推察される。

林野庁も調査を進めているが、現在の法律では森林が売買されたとしても所有権の移転を把握する手立てもなく、森林の管理に国が口を出す立場にないという。
国連によれば、世界の水不足人口は現在5億人と予測され、2千25年には30億人に達するとしている。経済発展に伴う工業化と人口増加に加え、干魃が追い打ちをかけ中国の水不足は深刻を極めている。対岸からみれば、日本の林地価格が30年前の地価を下回る暴落であることも食指を動かす格好の要因だ。

森林法には民有林の売買に関連する規制はなく、国土利用計画法も1ha未満の土地は届け出の義務はないとしている。
どの国を旅しても蛇口を捻って水を飲める国は稀だ。飲料水を求めて海外企業が林地に入れば、資本力にものをいわせて、飲料水工場くらい瞬時に建てられる。軒先を貸して、母屋を取られるどころではない、城を明け渡すようなもの。
地価の10倍を出そうと交渉するところもあるとか、売るのは材木だけに止めたい。巧い話に飛びつき、後々窮地に追い込まれることのないよう冷静な判を望む。
金も力もない一人として迅速なる森林法の見直しを求めたい。

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