今になって思い出した。種から育てる苗は「実生=みしょう」という。
京都府の北部に「山国=やまぐに」という地域があって、かなり以前、インタビューに訪れた。林業家の名前は草木(くさぎ)さん。土地もそうだし、お名前も自然そのもの。草木さんは「実生」苗にこだわっていて、そのための「母樹=ぼじゅ」を大切に守っておられる。
訪れたとき、山奥にある母樹までは行けなかったが、「台杉」の元となった「株杉」を見せてもらった。
もともと、切り株から育っている杉を見て、磨き丸太を効率よく採材するため取られた林業の一種。今は庭園木として知られている。一つの株から数本の杉が伸びているもの。その庭園木の元の株を直径1~2メートルにしたものを想像してもらえれば「株杉」となる。「株杉」のもっと大きなものを「櫓=やぐら=杉」という。
「株杉」に育つ木は「桁丸太」「磨き丸太」となる。「台杉」に育つ木は?
木造住宅に使われる垂木(建物の軒の出を支える部材)は普通、角材だが、料亭などでは雅趣をおぼえさせるために丸太を使う場合もある。この丸い垂木を採材する一つの方法が台杉だ。
俗に言う「北山杉」は、名前のとおり元々は「北山」地方の産。ここもインタビューに訪れたが、山の中で、満足に農産物が取れない。で、育った木を磨いて床柱の材料として供給した。昔は広い道も車もないので、人がかついで(もちろん1本ずつ)都=京都まで運んだそうだ。
(つづく)