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くじけないで   《朴訥の論》

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2010年の「高齢社会白書」が決定した。高齢化が高齢社会になり、

今や65歳以上が占める割合は22.7%と、最早4分の1は目前となった。

中でも独り暮らしの高齢者は465万人に達し、年とともに人間関係も

希薄となり、周囲との会話が2~3日に一回足らずという人が35.2%

(独居)もいるとは・・・

あれほど社交的であった母が、晩年雨戸も開けず、閉め切った部屋で

暮らしていたことを思い出す。

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大型店舗の進出で近辺に市場も無く、買い物にも行けない老いは

「買い物難民」という新語を生み、社会的な孤立は高齢者の犯罪

に拍車をかける。

その反面「手助けをしたい」と考える元気な高齢者が8割もいると

いうから、世の中そう悲観したものでもない。

孤立化を防ぐためにも調査結果を下に、サポート役の高齢者の

養成を促すとしているが、渉りに船で、旨く責任を担がされたような

気がしないでもない。

産経新聞の「朝の詩」でその詩をよく見かける柴田トヨさんが98歳

にして詩集「くじけないで」を出版された(飛鳥新社)。読む度にその

瑞々しさに感動する。 

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「病室」《九十五歳の私をはじめに 九十四歳、八十九歳、八十六歳

 女性4人の病室 それぞれの家族が訪れる日は 年寄りでいっぱい 

通路は車椅子で  交通渋滞だ みんなの笑いあう声を背に 私は 

倅の腕にすがって 窓辺から 澄んだ空を見る》

見方を変えれば老々介護が覗くが、彼女の歌に高齢者の愚痴や悲哀

は微塵もない。淡々と年を重ねることを楽しむようなおおらかさを感じ

小気味いい。

30年も建築に携わっていると、そろそろ世代交代が始まっている。

お母さんの足腰が弱ったため手摺をつけたい、ご主人の介護のため

エレベーターを検討したい、などチラホラそういった相談が増えている。

家も家族と共に育ち、変化を重ね、熟成していく。

「幸せ」《今週は 看護師さんにお風呂に 入れてもらいました 倅の

風邪が直って 二人でカレーを食べました 嫁が歯医者に 連れて行

ってくれました なんて幸せな 日の連続でしょう 手鏡の中の私が

 輝いています》

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トヨさんに学んだ、誰にでも与えられている手のひらの上の幸せ。

「ありがとう」が溢れてる。

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