TOP > 国産材コラム > バリアをバリューに 《朴訥の論》
バリアフリーという言葉は耳慣れているが、バリア(障害)をバリュー
(価値)とする社会を目指す人がいる。
広告会社の紹介で垣内俊哉さんとお会する機会を得た。大学3回生
の今年、友人と共に「ミライロ」を立ち上げた。障害があるからこそ
できることがある。目的はバリアを無くすバリアフリーでなくバリュー
にすること。2万人に一人という骨形成不全症を発症し、その病と
真っ向から対峙する姿に感銘を受けた。骨形成不全症は遺伝性
という、そのためにも未来に生まれるであろう子供の為、バリュー
にしておきたいと語る。
肉体的障害だけでなくバリアとするか否かは別として、経済的に、
はたまた社会的なことであったりと、総ての人が大なり小なりのバ
リアを抱える。もしあらゆる障害をバリューととらえることが出来
れば、ぐんと世界が広がる。
地域の発展と企業交流を目的に開催される淀川ビジネス・エキス
ポ2010に参加し、ミキハウスの三起皓一氏の講演を聴いた。
逆境にあって一番妨げになるのは既成概念だそうだ。家業を継が
ず勘当されたが、ベビー服と子供服の間に隙間があると感じ、
わずかな所持金で大阪の八尾で事業を起こす。
ミシン内職で20名の婦人に自からが裁断した子供服の縫製を頼
みサンプルを持って鹿児島から北上し、九州の高級子供洋品店を
回り歩いたという。しかし大阪八尾と聞くだけでサンプルを見てもらう
ことすら叶わず、売るために必死になり過ぎていた自らを改め、
相手が何を求めているかを聞くことで初めて小倉で受注を得る。
そこを起点に次から次へと紹介を受け、受注は増えるが生産する
にも資金がなく友人に助けられる。頭金がないにも関わらず銀行
に交渉し20代で土地の購入代金1億数千万円の融資を受ける。
全く以って常識の範疇に収まらず。
今では柔道の野村忠宏を始めオリンピックのアスリートを80人も
育てる大企業であり、そのアスリートが社員に力をくれると説く。
親からたやすく資本金を貰っていれば、今のミキハウスは存在しな
い、と振り返った。
過疎にこそできる術あり、貧しさをバネに変え、暇を生かせるこ
ともある。誰でも不安の中を生き不透明な時代に息を詰める、
それでも世界は動き変化する。今、自らの寿命を逆算し、新しい年
に臨むも良し。