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国産材コラム

広さより質を求め

住い考

空間に「プラスα」

やっとこさ梅雨が明けました。それでも湿気の多い日が続く日本の夏。クーラーを使わず風通しによって過ごせる家づくりを日々施行錯誤しています。

断熱や気密など一般の方の意識も高くなって、昔と比べ、ずいぶん室内の温熱環境が改善されてきました。ただ、反動として、樹脂サッシや質の高いガラスなどを使うことでコスト高になり、予算に合わせるのが至難の業になりがちです。

 

以前からお話していますが、面積を大きくすれば大きさに引っ張られ、質を下げざるをえません。大きさをとるか質を取るか、私の持論ではやはり質を取ることが賢明だと考えます。大きな空間に雑多にものを配置させるのでなく、とことん無駄を省き収納や家具までも細部まで検討してそれぞれの居場所まで考えることで、住まいは小さくても快適な暮らしが得られると思うのです。

 

「居場所」って?

 

家族の共有の場だけでなく、家族の気配を感じながらも、一人になりたいときには「籠れる」ような空間が「居場所」かと思います。これは大きさに依存しません。

居場所を造るにあたって、当然、素材や風や光といった自然環境により、居心地がいいことが絶対条件で、その空間を少し工夫することによって真に居心地のいい場所へとなりうるのです。

 

 

以前、借景のいいところに縁を設けたことがあります。屋根をつけた上で、座ることができる肘掛手すりもしつらえました。ゆったりと座り、雨の日も長時間そこでくつろげます。

空間に何かをプラスすることで、たちまち居心地がよくなる。この「かゆいところに手の届く仕掛け」をどれだけ作れるかで、いい家になるかどうかが決まってくるのかなと思います。

 

最近いろんな方が設計している住まいの見学会に参加していますが、「ここに座って外を眺めたらくつろげるな」「奥さんの居場所はここだろうな」とか施主さんのライフスタイルが見える家に会うとうれしく感じます。

 

そんな家づくりのために、建築士も施主様も断捨離的なライフスタイルの整理が必要ではないでしょうか。

 

(「木族」2015年8月号より)

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