TOP > 国産材コラム > 見学会の心カビ知らず・後 《山林》
(2002.9 山林掲載)
当時、今ほどは木材乾燥に対して意識されていなかったことも
あったが、人工乾燥をかけたとしても断面の大きな杉に関しては
含水率を抑えるのは困難であり、30%前後であること、プラスター
と梁の間に僅かでも空間を設ける配慮に欠けていたこと、
又は構造表しにするなど設計上の工夫が必要であること。
よりエコロジカルなクロスは防カビ、難燃、汚れ防止、ホツレ止めなど
化学薬品処理がされていない為、湿気があるとカビも発生しやすいこと。
のりも防カビ剤など入っていない澱粉のりを使うため尚更であり、
特に入居直後は塗り壁などもあり通風を充分にとること、降雨時は
窓を閉め切るのでなく換気扇やジャロジーなどで通風をとるなど、
入居後の建物への配慮も忘れないで欲しいと、移動中のバスで
前もって説明した。
吹き抜け部分には作業用の鋼製足場が組まれ、どう見ても
入居後の住まいとは思えない状況である。その中から愛想良く
出迎えてくださったお施主さんに、どう感謝を伝えればよいのか
胸が痛い。見学者もお施主さんを気遣いカビの話をするのは
1人もいない。それぞれに感謝と労いの言葉をお施主さんに
伝え帰路についた。変な話であるが予想もしない展開になり、
失敗はあってはならないことではあるが、失敗に学ぶことが
如何に多いか参加者以上に教えられた。
その後の補修工事は梁のカビを処理し、クロス下地に空間
を設け、吹き抜け部分を全て張り替えたが、気ままなカビの
胞子はあちこちに飛散し、2度の張替えを余儀なくされた。
現場見学会にしろ木造住宅講座にしろ、良しにつけ悪しき
につけ真実を話すように心がけている。
協会のイベントはおもしろいとよく言われるが、自慢できること
ではないが失敗も含め隠さず伝えることにあるのかも知れない。
確かにサクセスストーリーほどつまらないものはないが、
かと言っていい加減失敗談議も卒業したいのだが…。
この章はおわり